Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#102 いつかは迎える永遠の別れをどう受け入れるべきか教えてもらった

『夢をかなえるゾウ4 ガネーシャと死神』 水野 敬也 著 

人間の夢を叶えることを趣味とする関西弁のゾウ、ガネーシャ。今度は死神と地上にやってきた。

夢をかなえるゾウ4 ガネーシャと死神

夢をかなえるゾウ4 ガネーシャと死神

 

 

夢をかなえるゾウの4冊目。今までの3冊は以下。

#077 懐かしのエポックメーキング的な一冊 - Dahlia's book log だりあの本棚

#078 「このままでいいのかな」漠然と思ってしまった時に効きそうな本 - Dahlia's book log だりあの本棚

#079 結局は経験値を積んでレベルアップしていかない限り、いろいろなことは見えてこないよ、というお話 - Dahlia's book log だりあの本棚

 

4冊目はタイトルに「死神」とあるように、死がテーマとなっている。人は死んだらどうなってしまうのだろうという人類の疑問をガネーシャの言葉で「こんな考え方もあるぞ」と提案してくれている。

 

ガネーシャヒンドゥー教の神である。ヒンドゥー教の死生観も輪廻を基本としているが、仏教との違いでだれもが最初に想像するのがカーストという身分制度ではないだろうか。あとはカルマもヒンドゥーの言葉だったと思う。

 

この本は死することと、愛する人との別れがテーマとなっている。今回課題を課されるのは若い夫婦と一人娘がいるご一家で、ガネーシャはそのお宅に居候している。よく死ぬ前にやっておきたいことを考えろという話がある。まさにこの言葉のように、ガネーシャは死ぬ前にやっておきたいことのリストを作らせ、それを実行させる。

 

ガネーシャと死神は3冊目でお笑いの大会でのライバルで、今回も軽快な関西弁にクスリと笑わされるところもあるのだが、やはり死というテーマは重い。真正面から対峙するには相当な気力がいる。読み進めながら考えさせられるポイントも多く時間をかけて読んだ。前作3冊のようにさらっと一息に読む気分にはどうしてもなれなかった。合間合間にいろいろな思いが心に浮かぶ。

 

お笑い芸人さんが生前葬や遺書についてのお話をしていたが、死というものと対峙するには確かに笑いの力を借りたくなるな、と心細く思ったり。ただ、今この瞬間に愛する人を失う悲しみにある方にはガネーシャの言葉はなかなか耳に入らないだろうと思う。だから普通の日々を過ごせている今、読んでおけて良かったなと思う。

 

インパクトで言えば1作目が衝撃的だったけれど、濃さで言えば4冊目が最も心に残る。重いテーマであるだけに、哲学書などで読めばきっと断念してしまうだろう。できれば死の恐怖や虚無感に接したくはない。ガネーシャの面白さ(本当のガネーシャ神はこんなにお笑いに傾倒してはいないと思うが)でもってしても、やはり読者の心の見えないところにそっとビー玉のようなきれいな小石を残していったような一冊だった。つい目をそむけたくなってしまうけれど、いつかはやってくることだから。

 

いつか自分もこの世を去るし、その前に親兄弟、愛する人たちとの別れもあるだろう。あとどのくらい時間が残されているのだろうか。離れて暮らしている両親のことを思う。今はまだ元気だけれど、いつまでも見守ってくれているなんていうことはあり得ないのだ。逆に親を残してしまうかもしれない。何があるかわからない。そんな未来の備えとしてもまた折を見て一読したい。