Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#098 餡の案を練る庵というところでしょうか

 『はじまりの空 日本橋牡丹堂 菓子ばなし㈥』中島久枝 著

小萩が牡丹堂の中に「小萩庵」として創作和菓子コーナーを持つ。

 

さて、牡丹堂シリーズである。2020年9月時点で発刊されている最新版が6冊目。

 

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#095 時代小説版ラノベだね - Dahlia's book log だりあの本棚

#096 時代小説の悪役っていろんなタイプがいるものですね - Dahlia's book log だりあの本棚

#097 大福が届いて読書が進みます - Dahlia's book log だりあの本棚

 

こんな感じで5巻まで読み続けてきたわけだが、これで最新刊まで追いついた。

 

6巻目は小萩が徹次の計らいで牡丹堂の中に「小萩庵」として和菓子をプロデュースする仕事を本職とする場をあつらえてもらうところから始まる。要は本人も方向性が見えずに翻弄していたのを見かねた牡丹堂の面々が小萩に居場所を与えたというわけだ。

 

そして6巻目は謎が多すぎた。まず小萩が仕事場を持たせてもらったからだと思うのだが、牡丹堂の職人さんとため口で会話するようになっている。きっと小萩がこれからの牡丹堂で必須の人物となる布石だとは思うけれど、「同等」の役割の演出だとしたら少し不自然な会話も多い。

 

先回登場した家事をはじめとする中のことを手伝う須美さんの正体が知られるようになったこともちょっと5巻の話と合わないところもあるし、小僧として登場した清吉も登場した瞬間から嘘と裏と今後の展開がわかりやすすぎて別の意味で首をかしげる話となった。

 

なんだろう、この不思議な小説は。江戸を舞台とするラノベは初めてなのだが、ふわふわ感が好みな人ならばきっと今後の小萩の行く末を見守りながら最後まで読みたくなるだろうと思う。きっとハッピーエンドになるだろう。一方、私は起承転結、筋の通ったストーリーにハラハラしたい派で、すっと目の前に江戸の町が見えるようなすべての登場人物が生き生きと、話には出てこなくともそこに暮らしているであろう人々すら見てくるような力強さが好みなので、このシリーズは最終巻が出たころに結末の答え合わせのような気持ちで手に取るかもしれない。

 

9月に入り暑さも少し和らいできた。少し食のお話はお休みして、次の話を読んでみるとしようかな。

 

さて、時代小説にも食をテーマにしたものが多い。今までなかなか読むことがなかった分野だが、これからもう少し読んでみてもよいかなという気になった。