Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#904 江戸時代なら歩いて移動したであろう行き先へ電車4回乗り継いで移動中~「夜叉萬同心 5」

『夜叉萬同心 5』辻堂魁 著

遠い。

 

この頃読んでいる本シリーズ。結構ずっしりと読み応えがあって、1冊読むのに比較的長い時間がかかっている。その分楽しめる時間も引き延ばされるので遠距離の移動時間に読むことにした。

 

車であればさっと1~2時間で行ける距離なのに、電車となると倍以上の時間がかかる場所がある。私はたいてい公共機関で移動するので「読書時間が出来てラッキー」と思う質なのだが、近隣県でも乗換が4回とか5回となるとさすがに疲れる。土地勘の無い場所だと読書していて乗り過ごしてしまうと大変なことになるので、数駅の場合はじっと通り過ぎる駅と路線図を見ながら確認していることも多々だ。

 

今回は行き先が本書に出てくる地域を通るルートで、むしろ外の景色が気になった。今や電車でこうしてありがたくさくっと移動できるが、昔は徒歩だったと思うとこれを1日で歩くとはかなりの健脚!そもそも時代小説で一番驚くのは移動についてで、八丁堀から内藤新宿まで歩いて往復しているシーンを読む度に「無理じゃないけど相当ハード!」と日頃の運動不足の自分に歩け!と言いたくなる。

 

 

さて、5巻目。読み進むほどに主人公である七蔵の温かさというか懐の深さがにじみ出ていることに気が付けるのだが、本巻ではそのハードボイルドさに更に磨きがかかっており、西部劇に置き換えてしまいたくなるような渋さが光る内容だった。

 

七蔵はその剣術の腕や体格、加えて順調に昇進を重ねた周囲のやっかみもあり、いつしか町民にも無心するような鬼の同心というイメージを形作られてしまった。賭場などにも出入りし、誰一人として逆らえない男であるとの噂が立ち、それが夜叉のようだと夜叉萬というあだ名まで付けられてしまう。

 

同じ北町奉行所の中ではあっても同心には役割次第では顔を合わせることもないような場合もあり、特に隠密方同心である七蔵は調査のために長く不在にすることもあるため、七蔵と面識のないものもいる。噂のみを信じて七蔵と距離を置く者もいるが、お奉行には一目置かれている事実を他はあまり知らない。

 

今回も上からの司令で調査に当たる七蔵だが、今回はかつて江戸払いとなった悪人がまた江戸に舞い戻ったという情報だった。奉行所が自ら探し当てたのではなく、他の悪人仲間からの密告により事の次第が明るみに出た。密告内容の真偽を確認するにも、ここは腕利きの七蔵へとお奉行から直接指示が告げられる。

 

権八なる男は計画的に盗みを行う常習犯で、その一味が捉えられた際に江戸追放となった人物だ。それが地方でまたもや盗みで頭角を現しあやめの権八という二つなで呼ばれていたらしい。その権八が江戸に戻り、縄張り争いに加わった挙句、頭にあたる人物に手をかけたとの密告内容に七蔵はその証拠を追うわけだが、権八の影には一味とは別の人物の姿があった。

 

その人物の背景がなにか物悲しさを滲ませている。長く同心として任務に当たっているとその人物が悪事に関わっているかいないかがわかるようだ。七蔵もすぐにその人物の怪しさに気が付くも、なにかひっかかるものがある。それは「悪」という事実と、人をそこへ導いた過去の狭間にある「人情」なのかもしれない。

 

今回は猫の倫の登場は控えめ。ああ、早く続きが読みたい。

 

#903 数学、思っていたのと違う!~「数字であそぼ。 2~10」

『数字であそぼ。 2~10』絹田村子 著

数学の深み。

 

3月は思いがけない仕事が増え、焦燥感に襲われている。1日40時間あったらいいのにと言ったのは誰だっただろう。倍速で働けたら全て時間内に終わるのだろうかと変な妄想ばかりしている。

 

そもそも、私はあまり数字に強くないので資料を作りながら都度計算をし、出てきた結果に悩むのが常だ。これが数字に強い先輩らだと、基礎となる数字だけを見てぱっと答えを出してこられるので羨ましい限り。そう、数字に強いというのは私にとっての憧れである。そもそも高校時代に文系を選択してしまったので、高校2年あたりから理系の授業が全く無くなったことも大きく影響しているはずだ。数字と戯れることなく社会人になってしまったので、この弱みは自力でカバーしなくてはならない。

 

先日本書の1巻目を読み、数学の勉強の仕方というか、数学頭の人ってどんな風に考えているのかを垣間見れたような気がした。

1巻目が面白かったので続きを読もうと一気に購入。現在は10巻まで出ており、Kindle Scribeのおかげでマンガ読書も楽々です。

 

10巻までの流れを簡単にまとめると、めでたく吉田大学(京大をモデルにしておられます)に入学した横辺建巳は一度見たものを忘れない能力を持っている。大学に入るまではそのメモリー能力のおかげでかなり勉強ができた。日本の最高学府の一つである吉大に入学後もその栄光は続くかに思われたが、数学の授業で挫折。初めての「わからない」を経験する。

 

そのショックは思いのほか長引き、結局2年の間下宿に引きこもる。しかし学校から来た手紙を読み、重い腰を上げて登校。そこで友人北方に出会った。北方くんは入学後の2年間をスロットにつぎ込んでいた。あまりに没頭していたので学校に行く暇がない。学校に行っていなかったという共通を持つ二人は同志としてともに授業を受け、要約引きこもりから脱出。

 

しかし一緒に授業に出るようになっても、横辺くんにとっては数学の授業の内容が把握できない状況は変わらなかった。教科書を暗記しても自分の力で考えるだけではなく、高校まで学んできた数式を解くというものと理論を考えるというのは別物である。北方くんの支えにどうにかがんばってついていっているが、やはり試験は難関だ。

 

そこで過去問を売買している猫田くん出会う。猫田くんは過去問を売る際にクイズを出す。その回答までの時間で売価が変わるというシステムを取っている。猫田くんは学生の割には裕福な生活をしているが、これは過去問売買だけのものではない。横辺くんが過去問を購入したことをきっかけに3人の交友が始まる。

 

そもそもなぜ横辺くんが引きこもり生活へ突入したのかというと、同じ授業を受けていた同級生はその授業に満足した様子を知ったからだからだ。その同級生というのが夏目まふゆ。天才であり変わっている。いや、かなり変わっている。そしてそんなまふゆにも友達がいた。それは横辺くんや北方くんを驚かすのだが、唯一の友達平坂世見子ちゃんは至って普通。なぜまふゆちゃんと友達なのかがわからないが、神社の娘さんでたまに巫女さんとして家を手伝っている。

 

そんな5人に加え、吉大のキャラクター濃いめな教授陣が数学に真剣に取り組んでいる。2年を無駄に過ごした横辺くんだが、その後しっかりと専門分野を決め、今はなんと大学院にも通っている。5人が全員大学院に進学しており、博士課程どころか教授になるまでマンガが続きますように。

 

とにかく、読むと前向きになれます。天才でも苦労しているのがよくわかる上に、天才はただ単に賢いだけではなくとにかく勉強している。その様子を見ているだけでモチベ上がります。

 

10巻まで通して読んで思うことは、やっぱり「動物のお医者さん」と和山やまさん作品を読んだ時の感じに似ているかな、ということ。ここに「京都」という要素が加わるので万城目学さんや森見登美彦さん要素を加えた感も同時に味わえる。

 

11巻が出る前に著者の他の作品も読んでみようかな。

 

 

 

#902 最終話まで学びの多い江戸版ビジネス書~「あきない世傳 金と銀 特別巻(下)」

『あきない世傳 金と銀 特別巻(下)』髙田郁 著

本当に最終回。

 

3月の半ばからは人の動き増加する時期だ。学生ならば進学、社会人ならそろそろ内示が出て転勤の準備を始める方もいるだろう。コロナ禍の頃を思い浮かべるとこれが通常だったはずなのだが、今となってはあまりにも人に会う頻度が増えて時間を作るのが難しい。ついつい億劫になり「オンラインでいいじゃん」と思ってしまうが、やはり人とのご縁は大切にせねば。

 

そういえば、日頃お世話になっているお店の方も4月より海外で新たなスタートを切る予定と言っていた。いろいろな想いで春を迎えている方がいるんだろうなぁと考えると、自分の毎度変わりのない日々が良いのか悪いのかと悩ましくなる。

 

とにかく他出が増えてなかなか記録が残せないのがもどかしい。この間、待ち時間の合間に入った書店で本書に遭遇。ついに、ついに!本当に最終巻となりました。

 


大阪の呉服商の五鈴屋のお話。地方から奉公に来た幸は類まれなる賢さと、貪欲に知識を得ようとする向上心があった。女中として働くにも雇う側が許可しないことには勤めは叶わない。幸が五鈴屋に連れて来られた時と同時に、五鈴屋での奉公を求める娘が他に数人、時を同じくして五鈴屋の離れに座っていた。当時家を仕切っていたのはお家さんと呼ばれる五鈴屋の創業者縁の女性である。

 

女中として雇えるのはたった一人。さて、どうやって目の前の娘たちから選び抜こうか。五鈴屋は娘たちの目の前に半襟をいくつか出し、好きなものを手に取れと言った。美しい素地で作られた真新しい半襟を前に喜ぶ娘たち。普通の10代になったばかりの娘ならば絵柄の美しいものを選ぶのだが、幸が選んだのは黒く染められた地味なものだった。しかしそれこそが最も高価なもので、素材の質も良く、なにより貴重なものであった。それを選んだ理由は温かそうで汚れも目立たず何より美しく着物に映える。実家の母に贈りたいという幸を見て、五鈴屋は幸を女中として迎え入れる。

 

それからの幸の人生は想像とはまったく異なる形で五鈴屋に尽くすことになる。物語の後半は幸が女性であることから店主になることができないという大阪の決まり事を避け、それでは江戸でと田原町に五鈴屋江戸店を開業させる。順風満帆ということは決してなく、都度湧きおこるハプニングを幸の知恵で乗り越えていく様子に感情移入してしまう。

 

タイトルにあるように「あきない」についての話であることから、学びにもなる点が多くあることも読んでいて楽しみにつながっていた。今の世の中、会社に人生を捧げるほどの愛社精神を持つなんて滅多にないことだし、出世の幅も狭いうえに、社員と寝起きを共にしなくてはならない。三度の飯はあれども、休みも少なく昔の日本人の勤勉さに驚くばかりだ。しかし、商売に対する精神がわかりやすく描かれているのが本書の肝だろう。

 

自分のことしか考えない人、社内に多くいるはずだ。自分だけが楽をし、利益を享受しようとする。社外でも自分本位を押しつけ、会社にとっての利益ではなく自分の社内でのポジションしか考えずに言動する。きっと会社が大きくなることや、働く一人一人の成長というのは商いの哲学だけでは至るはずはないだろうけれど、新事業を検討する時、スタートアップを立ち上げる時、きっと幸のような思いで社会に貢献しようとするのではないだろうか。

 

去年特別巻が出た時に(上)とあったことから、2冊いやいやもっと続いて欲しいと願っていたがこれで本当に完となりました。

 

 

#901 天才の挫折っぷり~「数字であそぼ。」

『数字であそぼ。』絹田村子 著

数学。

 

3月に入り体調管理が上手く行っていないことに加え、仕事が少し忙しい。お得意先様とも花粉症や気温差アレルギー、低気圧による体調不良など、今年の3月は例年よりハードだよね、という話で盛り上がった。

 

外出するとなんだか一気に疲れが出てしまう。オフィスに戻る途中、気分転換にと書店に立ち寄った。本書はそこで出会った一冊である。コミックのコーナーを素通りしようとした時、学生さんたちが本書が積まれた一角の前で「これ、読んだ?」と本書の話をしていた。何気に聞こえたその会話に引き込まれ、つい1巻目だけ購入。あまり数学は得意ではないが、マンガだし読んでみることにした。

 

主人公の横辺建己はこの度晴れて西日本を代表する吉田大学へと入学した。吉田大学はどう考えても京都大学を想定しての流れで、天才がうようよいる感じは変わらない。横辺くんもその天才の内の一人で、彼は一度見たものを瞬時に覚えてしまうという能力がある。しかもその記憶が頭の中にストックされているので学業に苦痛を感じることがなかった。

 

 

この設定、今や英国ロイヤルの不人気代表格となってしまったメーガンが登場していたことで知られる「スーツ」というドラマの主人公と同設定だ。彼も瞬間記憶の達人で、六法を始めとする法律関連のあらゆる資料をすべてインプットしている天才だ。しかし弁護士の資格を持たず、自身の履歴を隠して弁護士として活躍するといった内容。

 

しかしどんな天才でも挫折を味わうことがある。横辺くんの場合、なんでも頭の中に入っているものを引き出してくるだけでテストも難なくクリアできたので、自力で考えるということに慣れていない。

 

大学に入り、数学のクラスでそれは起きた。周りの学生はふつうに問題なく授業についていっているようだが、横辺くんは何が起きているのか全くわからない。板書されたものはあっという間に記憶できたが、何を話しているのかその意味が全くわからない上に、何について自分がわからないと思っているのかもわからない。

 

クラスメイトはむしろ授業の内容に満足している風でもある。困った横辺君は声をかけた。そして彼は人生初の挫折を味わう。


このまま横辺くんは講義1日目にして引きこもり生活に入ってしまった。今まで「わからない」を経験したことが無かった彼にはこの「数学なのに何言ってるのかわからない」という事態は相当ショックだったようだ。そしてそのまま2年間を引きこもって暮らしてしまう。

 

横辺くんは大学の近くの下宿で暮らしていて、そのおうちにはだんごというわんこがいる。そして大家さんは毎日着物でザ・京都な感じのおばさま。今、この下宿には大家さんとだんご(犬)と横辺くんの3人暮らしだ。2年をだんごとの散歩に費やした横辺くんだが、3年目になる時に大学から来た「長期在学者諸君へ」という手紙を読み、復学を決意する。

 

さて、これからまたあのわからない数学に対峙しなくてはならない。初日の講義で会った同級生はすでに3年目。また1年目からふりだしに戻った横辺くんがどのようにキャンパスライフと数学の授業を克服するかが描かれている。

 

本書、個人的にツボだった点がいくつかあった。内容は佐々木倫子さんの作品に共通するところがあり、「動物のお医者さん」や「heaven」が好きな方は楽しめるはず。そこに和山やまさん風なイラストが加わりより面白さに磨きがかかっている。

 

試し読みにと1冊だけ購入してみたが、これは続きが読みたくなってきた。

 

 

#900 辛いこと、悲しい記憶を心の中に閉じ込めた男の話~「夜叉萬同心 4」

『夜叉萬同心 4』辻堂魁 著

思い出の深くにいる祖父と妻。

低気圧のせいか体調があまりよろしくない。加えて花粉も盛大に飛び始めており、肌のあちこちがかゆくて大変。花粉のシーズン、こんなに過敏になっているのは関東エリアだけなのかな?と思うことが多々ある。春の出張で関東エリアから脱出すると、一気に花粉症の話題が減るように感じるのは私だけだろうか。杉や檜が育たない沖縄や北海道であればわかるが、大阪あたりでも花粉症だという人が東京より少ない気がする。

 

そして出張者がやってきた。それもかなり突然に。前日の午後に「明日から行きます」の連絡があり、翌日の午後一で到着してからちょっと忙しくなってしまった。予定を大きく変更するので今週末もお仕事の予定となってしまいそう。ストレス発散のため、この頃読んでいるシリーズを空き時間に黙々と読んでいる。

 


本書はシリーズの4作目にあたる。この頃自分の読書スピードが落ちているのか、それとも本書のボリュームや内容のせいか1冊を読むにあたりかなり没頭しているのか通常の読書より時間がかかっている。とはいえ、楽しみの時間が拡大しているのだから、それはそれで良し。

 

4作目にして主人公の萬七蔵の過去がわかった。萬家は同心の家系である。同心は本来世襲ではないが、慣習的に子供に引き継がれることが多かった。七蔵の祖父が家督を譲り、同心として活躍していた父は事件に巻き込まれて早世。その後を追う様に母も去った。残された祖父と七蔵だが、七蔵は十歳を超えてすぐに見習いとして奉行所へ行き、家督を引き継ぐ準備を始めた。今までは祖父の手一つで育てられたことのみが語られていたが、4冊目にして亡くなった妻のことが語られ、それがまた染み入るほどに悲しみが心に広がる。

 

七蔵の妻については七蔵に嫁いだ後、たった数年で子を残すこともなくこの世を去ったことしかわからなかった。病なのか、事故なのか、または想像したくない辛い理由なのか。それに七蔵の気持ちもわからなかった。どのようなところから来た女性で、七蔵とはどういう縁があり、この婚礼が七蔵にとってどのようなものだったのかなども全く語られていない。しかし七蔵は妻の他界後に再婚することもなく四十を迎えている。

 

ある日、七蔵が調べの件で手下の樫太郎とともに帰宅した七蔵に、来客の知らせがあった。同心の家に良く知った風な口調で七蔵の部屋に上がり込んだが、その風体が町人のようであったことから家を切り盛りするお梅は心配でならない。男は名を桃木連太郎と告げ、七蔵の部屋で帰りを待つと言い、すでに部屋にいることを伝える。

 

それを聞いた途端、七蔵はいつにない喜びようで仕出し料理を頼めと言い、家の者にも宴を楽しむようにと告げる。この連太郎こそが七蔵の心の友であり、妻の実兄であった。桃木家は医学の道を行く武家で、連太郎の父は八丁堀を支える町医者であった。幼い頃から才覚を見せていた連太郎は長崎で医学を学ぶほどの実力で、末は父を超える名医になると予想されていた。

 

当時長崎で医学を学ぶことは最先端の知識を得ることができる唯一の道で、今で言う留学のようなものだろう。しかも江戸から長崎は非常に遠い。よってその費用は莫大なものであった。江戸へ戻った連太郎は桃木医院の経営難を知り、愕然とする。父は貧しいものからは金銭を取らず、出せるものからは大きな金額を取ることでかろうじて医院の運営を保っていた。これではいずれ破滅すると考えた連太郎は、自らが商家などを回り大きな収入を得ることで経営を再建しようと考える。

 

しかし、そんなことくらいでは埋められないほどの赤字に、連太郎が考えたことは次第に桃木家を没落へと向かわせた。そして最後には連太郎は逃げるように江戸を去る。七蔵と連太郎の二人はもう20年ほど互いの噂を聞きつつも、顔を合わせることもなかった。そして今、再び懐かしい親交を温める。

 

連太郎は自身の不在中に起きた桃木家について、七蔵より話を聞く。七蔵がここまで感情を押し殺しつつも己の心の中を語る様子が本書に一番の読みどころである。何年も心お腹に滓として残っている悲しみが言葉となって表れてくる様はただただ美しい。

 

電車の中で読むと辛いことになりますので、ぜひぜひご自宅での読書をおススメします。

 

 

#899 会社がアシスタントを雇ってくれないので~「堀江貴文のchatGPT大全」

堀江貴文のchatGPT大全』堀江貴文、荒木賢二郎 著

使いこなしたい。

 

夜半からの雨で街が冷えている。今年は過去に見ないほどの暖冬だそうだけれど、朝の出勤時、寒くて寒くてマフラーとか手袋持参するべきだったと何度も後悔する。風邪などお召しになりませぬ様お気を付けください。

 

さて、皆一度は使ってみたことがあるであろうChatGPT、「毎日使ってるよ!」という人も多いだろうが私の身の回りでは高頻度で使用しているユーザーは少ない。しかしこの頃のワークライフバランスの悪化にもう一度ChatGPT試してみようかなという気になり本書を購入した。

 

そもそものスタートが悪かった。アメリカ人の友人がChatGPTの存在について教えてくれ、早速一緒にやってみたのだが、私の英語の文章が悪かったせいか全く価値のない情報が出て来た。たしか入れた内容は「接待に使えそうな都内のベストレストランを5つ教えて」だったはず。この時はまだ日本語対応していることを知らず、延々と英語で都内の観光情報やレストラン情報を引き出そうとしてみたのだが、結局「これは進化を待つに限る」と判断し、その後ほぼタッチせずに来た。

 

一昨年くらい「日本語もできるようになったらしいよ」との情報を得、また試しに使ってみた。たしか「5スターの都内のホテルで売上順にベスト5を教えて」みたいな感じのことを調べようとしたはずだ。そしてやっぱり帰ってきた回答に納得できなかった。リッツカールトンやオークラなどはわかるとして、なぜか台東区にある検索してもヒットすらしないゲストハウスなんかが出てきて「やっぱり使えない」としばらく放置して今にいたる。

 

本書を読むと、いろいろなお立場の方々が業務にChatGPTを利用しておられる様子が記されている。IT業界の方はもちろんのこと、お医者様や農家さんも出て来ていて幅広く使用されている様子が伺える。

 

わかったことは、曖昧な指示ではChatGPTは力を発揮しきれないということ。恐らく本書の文章すらChatGPTで書かれていることが予想されるが、他者が読んでも違和感を感じられないくらいの文章になるような指示書が必要なわけで、その明確な指示を学び続けたGPTさんがあたかも秘書のように活躍するように育つとうことだ。

 

するともっとも大切なのはその指示にあり、そこをクリアしないことにはGPTさんはいつまでたってもどこか抜けた回答を繰り返すだけで、なかなか秘書へは育たない。指示を出す側にも学ぶべきところがあるわけだ。

 

これはまだ全てチェックできてはいないのだが、本書には購入者特典があり、その指示の出し方についての例文100と使用法についての動画が公開されている。私が本書を購入した目的がまさにこれが欲しかったからで、例えば挨拶文を出力して欲しい時などのこちらの要求に対する司令文、目的・ゴール、制約条件の書き方が添えられている。ほぼ本書内で紹介されている内容に沿っており、それに対する作業過程を紹介している感じだ。

 

この頃、上から降りてくる資料作成の依頼に「なんでこれを私が?」なものが増えてきた。明確な担当がいない場合や、大雑把に現在の担当分野にかすっているような内容がほぼ毎日、しかも上からご指名受けての依頼だったりするので断りにくい。(というか、弊社の場合はほぼ断ることは無理なのです)アシスタント欲しい!⇒でも人が足りないし採用してくれる気配もない⇒だったらAI!という流れで今ChatGPTを習得して時短業務を目指したいと考えている。

 

時短と言えば、私は未だ動画サイトを堪能できずで役にたつことが明らかな内容も落ち着いてみていることができない。だから新しい知識については圧倒的に活字から情報を得るほうが楽である。でも文章を読むことは時間がかかるから、まさにChatGPTで情報を要約する機能なんかは期待できる。どうして動画が苦手かというと、途中途中で自分の考えが浮かんできた時の対処方法がわからないからである。活字ならちょっと読むのを止めてメモでも取ればよい。動画の場合でも一瞬止めてメモしたり音声録音などすればよいのかもしれないけど、その後のメモの処理で音声をチェックするとかが面倒。あ、このメモをChatGPTに文章起こしてもらえばよいのか。

 

ということで、これからちょっと学んでみる予定。

 

#898 ついに出会った憧れの女性!~「フランス人は10着しか服を持たない ファイナル・レッスン」

『フランス人は10着しか服を持たない ファイナル・レッスン』ジェニファー・スコット

シリーズ最終巻。

 

この間、仕事でとても素敵な方にお会いした。遠くからでもすぐ目に付くような華やかさがあり、近づくと本当に本当にきれいな方で思わず見とれてしまった。彼女とはオンラインですでに対面しており「きれいな人だなあ」と思ってはいたのだが、実物はさらに美しかった。もう立っていても座っていても凛とした様子は変わらず、笑顔がステキでお話する内容もポジティブ。キレイとかカワイイ人は何人にもお会いしたことがあるが、そのお人柄も含めて「美しい」とか「素敵」な人って実在するんだ!と感動するほどに、とにかく素晴らしい方だった。

 

そこで自分もブラッシュアップしなくてはと読みかけて放置していた本書を読むことに。とにかく彼女のようになるためには、今から相当な努力をして自分を律する必要があるというのはお会いした瞬間にすぐにわかった。さて、何をどうしようというところがぼんやりしすぎている。外見から中身まで、出来ることは全部やってみようという気になっている。まずは本書から、他にも手持ちの書籍がいくつかあるはずなので、そこからエレガンスについて学びたい。

 

さて、本書は学生時代に6カ月のフランス留学に行ったことで大きな影響を受けたという著者が書いた本で、シリーズは3冊に渡っている。

 

1巻目が一番面白いような気がするが、こちらは著者が実際にフランスで経験した実話が語られており、ホームステイ先がもともとは身分のあった方なのか、とても洗練された生活をしておられたらしい。カリフォルニアの女の子には隙の無い堅苦しさに見えたかもしれないが、著者はホストであるマダムに教わった上流の暮らし方に感化されていく。

 

2巻目はフランスで得た知恵を、大人になり、二人のお子さんが生まれてからどのように生かしているのかが紹介されている。カリフォルニアに行ったことがないのでよくわからないが、パリに比べれば気候も温暖でカジュアルなイメージがある。カジュアルというのは行き過ぎるとだらしなさにもつながり、そのだらしなさを避けるための工夫があった。

 

3巻目は総集編で2巻の内容をもっと大人向けにアップグレードした感じだろうか。仕事をしながら、どのように心を落ち着かせ、凛とした女性として毎日を過ごせるか。この「凛とした」という言葉は私が目指す姿でもあり、言い換えると「できる女」という感じかもしれない。私がお会いした方は、まさにShe is class!で、彼女のようになりたいという気持ちだけでモチベがあり得ないほど上がっている最中です。

 

お会いした場所はホテルのロビーで、一緒に朝御飯を頂いた。お食事している姿も、お食事している間の会話の様子、お話の内容、佇まい、メイク...もう全てが完璧で朝からぼーっとしてしまう。周りを見るといかにもビジネスで来日しました!風なパワースーツに身を包む男性や、優雅なご年配のご夫婦など、私以外はものすごくものすごく「上流」で、ビジネスの上でも今の自分に「これはいかん」と反省した。

 

私も彼女のようにいつか人に憧れられるようにならなければ、仕事も順調に進まないだろう。それだけではなく、彼女には幸せそうな様子があり、人を安心させる。あんな魅力的な方、人生で初めてお会いしました。

 

本書のようにエレガンスを追及する本を今までも何冊か読んでは来たが、その実践した姿が頭の中に無かったせいかあまり身に付いていなかったように思う。それが目の前に「お手本」のようなエレガンスが現れ、俄然やる気も出て来たし書籍の言いたいことの意味がすっとわかるようになった。

 

エレガンスを身に付けるには、やはり憧れる生身の人に接することが第一。