Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#919 表紙の美しさに見惚れる~「リボン」

『リボン』小川糸 著

生きること。

 

やっとの思いで携帯を新調した。スマホを使い始めたのはまだ海外に居た頃だった。通信会社はそれぞれの国でそれぞれのプランを持ち、その差は結構大きかったりする。料金形態も異なるし、カバーエリアの差によりそれぞれの通信会社ごとに1台ずつスマホ持ってるよという地域に出かけたこともある。海外ローミングが激安な国もあれば、とんでもない金額になる国もある。その点では日本はまだまだ基本料金が高額ですね。

 

数年前に帰国した時、選択肢がありそうでなさそうな日本の「事情」がなかなか把握できず慣れるのに苦戦した。というより未だあまりわかっていないことも多いのだが、とりあえず使うに困ることはない。スマホはとても元気に丈夫で、壊れてもいないし普通に使えるし、もっと言えば会社の携帯も持たされているので全く不便を感じずにいたのだが、この頃充電が持たないことが増えてきた。そろそろバッテリーの寿命かなと思いつつ数か月。ついに電話1本でバッテリーがFullから30%台になってしまい、重い腰を上げてアップルストアへ。その場ですぐに購入した。私の旧機はホームボタンのある一桁台のiPhoneだったが、下取りキャンペーンのおかげで約1万円ほどがキャッシュバック。アップル、ありがとう。

 

それにしてもスマホ、高いですね。携帯は古いものでもあまり気にないのに、なぜかmacbookだけは定期的に新調し続けている。このほど出張用にairを買おうかと検討していたのだが、スマホと金額に大差がなくて驚いた。こちらは秋まで待とうかな。

 

さて、そんなスマホ新調に気を良くして、Kindle内の読んでいなかった書籍から表紙のキレイなものを選んだ。

([お]5-4)リボン (ポプラ文庫 お 5-4)

 

きれいなのでもう一回張っておこう。

よくよく見ると刺繍です。この鳥はオカメインコと言うそうで、彼が本書の主人公である。鳥はペットの中でも比較的長寿で30歳くらいまで生きるそうだ。30年と言えば、小学生が大人になって結婚し、子供が産まれてその子が小学生になるくらいの期間に相当するだろう。

 

本書は短編集の形式で、1話目と最終話が時代を経てリンクする。1話目で卵から鳥がかえった。3つの卵のうち、かえったのは一つだけだった。産まれた彼は「リボン」と名付けられる。リボンはおばあちゃんのすみれちゃんと、孫のひばりさんの手でこの世に誕生した。卵を見つけたすみれちゃんは、なんと自分のおだんごまとめた髪の中で卵を温めた。小学生のひばりさんは転卵などを手伝う。大親友の二人は祖母と孫の関係であるが、実は二人に血のつながりはなかった。というのも祖母はひばりの父を養子として迎え入れ、育てたからだ。

 

すみれちゃんは若い頃に音楽を学んでおり、ちょうどベルリンの壁が築かれた頃にドイツに留学していた。ベルリンの壁は約30年あまりベルリンを東西に分け、1989年についに崩壊。その様子をすみれちゃんとひばりさんはテレビで見ている。1989年は平成元年だから、時代設定は平成のお話となる。

 

すみれちゃんとひばりさんの温かい関係性にリボンの存在が加わり、和やかにストーリーは流れていく。読んでいるとおばあさんとお孫さんのふれあい、そして「生きるとはなにか」を伝えるという点で梨木香歩さんの「西の魔女が死んだ(新潮文庫)」に重なるところがあるのだが、そこにリボンがいることで話は育つ。

 

ある日、学校から帰ったひばりは、玄関前ですみれちゃんが倒れていることに気が付いた。急いで駆け寄ると、窓を開けた隙にリボンが外へ飛んで行ってしまったという。そこからストーリーはリボンの旅となる。

 

リボンは飼い主が変わる度にに新たな名を付けられる。みな、意味があり、思い入れがある。リボンの行く先はいつも何か事情があり、やはりそこでも「生きる」ことがテーマとなっている。

 

最後の章を読むことで本書の筋が見えてくるのだが、想像した通りではあっても泣けてくる。美しい鳥の表紙が心から離れない。