Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#770 そろそろ夏休みの準備をと思いきや~「蔵前姑獲鳥殺人事件」

『蔵前姑獲鳥殺人事件』風野真知雄 著

耳袋シリーズ。

 

出張中に読んだ本を淡々と記録しようと思っているのだが、このシリーズを数冊読んだ以外ほとんど別の書籍を読んでいないようなので思いついた順に残していこうと思う。

 

本書は耳袋シリーズなのだがWikipediaでは「殺人事件シリーズ」として紹介されているが、Amazonではシリーズとしてカウントされていない。4冊ほどがシリーズ外になっているのでここから先はタイトルから探していく作業となる。

 

時代小説のシリーズものはタイトル順番が打たれないものがあるので、一冊読み終えるごとに次の作品名を確認し、Kindle内で検索かけて呼び起こす作業がちょっぴり面倒。あとKindleでも読了後に次作を教えてくれるものもあれば、そうではないものがある。あの違いって一体何なんだろう。

 

 

南町奉行である根岸肥前守は身近に数人の部下を置いている。このシリーズが始まって以来は根岸家に仕えていた坂巻と、同心の栗田が中心となって捕物をリードしていた。この作品から元根岸家の家来である宮尾と同心の椀田が活躍している。

 

宮尾は坂巻同様に容姿が良く、そもそも根岸の周辺には姿のよいものが多い。根岸自身もかなり恰好の良い風があるし、加えて人柄が魅力的だ。宮尾と椀田も調査に少しずつ慣れ始めているが、まだまだ坂巻と栗田のような阿吽の呼吸のコンビ感はない。

 

さて、タイトルにある姑獲鳥は「うぶめ」と読むらしい。また新しい言葉が出て来たので調べてみた。漢字で検索をかけると「こかくちょう」とあった。子供を産んでから他界した母親の魂のことを言うらしい。タイトルから内容が想像できそうな気もするが、そこはやっぱり耳袋シリーズらしい変化球となっている。

 

蔵前は名前の通りに蔵があったエリアで差配が多く住む町だ。差配になるには株が必要で、それを得るには非常に困難であったらしい。差配全てが裕福なわけではなく、もちろん大手もあれば小さなところも多くあった。商いの力で大きくのし上がって武士よりも力を得たところもあるし、逆に細々と続けるので精一杯のところもあったようだ。

 

上総屋はそんな蔵前で差配を営んでいる大店だ。周囲からの評判も良く、ここ数年で大きく育った店とも言える。その上総屋に出るらしいのだ。姑獲鳥が出るというからには産後に他界した人がいなくてはならない。しかし上総屋はうんと若い娘を後妻にし、しかも後妻には赤子が産まれたばかりで滅法幸せに暮らしている。よって姑獲鳥が寄って来るわけがない。

 

なぜ順風満帆の上総屋にそのような奇怪な事件が起きているのか。きっとそこには何か人の起こした影があると呼んだ南町奉行所は、見えるはずのない幽霊を追うことにした。

 

幽霊の作り方というか、どうすれば怖がらせることができるのかはお化け屋敷に通ずるところがあるが、化け方と言う点でもこのシリーズは面白さがある。全て怪奇につながる点を持っているが、ほぼ人が介入して事件につながるのが特徴だ。本書は中でもその裏の裏を行くような深さがあって読みごたえがあった。

 

さて、このシリーズもあと数冊で終わりなのだがそろそろポアロシリーズも読んでいこうかなと思った矢先、8月の残りの週末が全て来客でつぶれてしまいそうなことに気が付いた。コロナ禍がぐっと落ち着いた今年の春以降、日本にやって来る方々がものすごく増えている。ポアロの前に歴史書でも読もうかな。