Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#918 春はお片付けの季節です~「1000枚の服を捨てたら、人生がすごい勢いで動き出した話」

『1000枚の服を捨てたら、人生がすごい勢いで動き出した話』昼田祥子 著

断捨離。

 

春が近くなり衣替えの準備をしたいと考えている。早いうちにクリーニングに出すべきものなどはお店に持参。あと今年はお直し予定のものもあるので早々に対応したいところだ。断捨離を考えるにあたり、私にとっては服が最も始め易いアイテムで、単純にある一定期間の服の登場回数を基準に粛々と進めている。全く着なかったものは処分。数回来たけれどあまり個人的に好みではないというものは外出用から家着などにシーンを移動させ、古いものを処分。とてもシステマチックに考えられるので楽々断捨離である。

 

一方で本となるとそうはいかない。そもそも未読が多すぎるので捨てる捨てないの判断が出来ない。まずは読んで内容を吟味することから始めなくてはならないのに、あれも読みたいこれも読みたいと次々に購入してしまう完全なる沼。まずは「読む」という対象物そのものに対峙するというスタートラインが洋服と本では異なるので、洋服のほうが私にとっては痛みの伴わない断捨離となる。

 

とは言え、そう愛着があるわけではないが捨てられないものがある。それは購入時の金額が高額であったもの。この「高額」は文字そのもののhigh priceではなく、買った当時の収入に占める割合と言うか労力というか、それを購入するにあたり生活費を切り詰めたとか、ものすごく考えに考えて購入したとか、当時の買い物として費用対効果があると判断して買った物だ。つまり買った事自体に思い入れがあるために捨てられない。

 

しかし、本書を読んで少し気持ちが変わったかもしれない。

 

本書は洋服に特化した「捨てる」の話であり、断捨離関連の数ある書籍と内容が重なる部分も多い。しかし、一般人が1000着もの衣類を持ち合わせているということはまずないだろうし、コーディネーターというお仕事柄、洋服を見る目は超えているに違いない。衝動買いのレベルも異なるだろうし、捨て服なんて無いに等しいのではないだろうか。

 

人によっては洋服の断捨離は簡単でも趣味で集めた物が捨てられないという場合もある。むしろ本書の「衣類」の部分を本やCDや化粧品や食器などに置き換えて読むことで2倍にも3倍にも本書の意図が広がってくる。コレクターに向けての断捨離とは!を説いた本といった方がわかりやすかもしれない。

 

タイミング的に人生におけるイベントが著者の断捨離のタイミングと重なり合っているようなところも否めないが、確かに大きな変化は起きている。もし今、私の家から1000冊の本が消えたら、確かにスッキリ感はあろうだろう。常に頭の中に「紙の本を読まなくちゃ」という意識が小さなストレスになっていたとしたならば、それが完全に消え去ることで気持ちも晴れやかになるに違いない。

 

こんな感じで服を別のものに置き換えて考えていると学びは大変多かった。著者は自身の経験からご実家の片付けについて書かれており、そのお話が妙に印象的に心に残った。著者のお父様はがん闘病中ですでに何度かの手術をされているそうだ。すでに子供たちは巣立ち、80代のご両親お二人で6LDKの戸建てに住んでおられる。スペースがあるだけに物を溜め置くことが可能であることから、ご両親はお子さんに関する全てのものを、約50年あまり保管していたそうだ。

 

80代という年齢は恐らく過去に執着してしまうと思うので、よりお子さんの小さな時のものなどは捨てたくない!と思われるだろうし、もしかするとそれがどれほどの量になっているのかも想像つきにくいのかもしれない。小さな赤ちゃんの洋服も思い出の1着くらいなら良いけれど、全て保管となると相当な量になりうる。

 

しかしこう言っては残酷かもしれないが、80代となれば終活に向けての作業を始める人もおり、残された人に迷惑が掛からないようにと身辺整理を始める方が少なくないという。著者が「80になって’いつか使う’はもうないんだから、今使っていない物は全部捨てて!」と書いておられるが、高齢になるとその判断が付かない上に片付ける労力もない。頭の中に自分の実家の様子が思い浮かび、せめて実家に置きっ放しの自分の物は早々に片付けようと決意。

 

物を手放す行為の中で最も期待する点は、片付けや断捨離関連書籍でよく見かける「何かを手放せば必要なものが入って来る」ことだ。もちろん本書でも触れられており、そこがモチベーションアップにつながった。捨てられなかったあれこれも、デザインが古くなっているし、重さや機能性などを考えるとそろそろ卒業時期なのかもしれないと思えるようになった。1000枚もの衣類を手放せば部屋1つ分くらいの荷物になるわけで、そこから発生した変化はきっとこの1冊では書ききれなかったことだろう。なんとなく続編があるような予感。