Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#917 江戸の美に癒されています~「夜叉萬同心 9」

『夜叉萬同心 9』辻堂魁 著

品川。

 

時代小説を読むことは、私にとってファンタジーを読むと同様で、実際に経験したことのない世界を想像できる点で共通している。江戸のお話は魔法モノの作品を読むこととそう大きな違いはなく、どちらの作品も想像力が広がることと目の前の現実から別の次元へ飛び立つくらいの大きな気分転換になっているのだが、この読書の習慣が無かったらきっと押しつぶされていたかもしれない。趣味や気分転換の方法を一つ持っておくことをこの春社会に出た方には是非是非おススメしたい。

 

さて、今ものすごく楽しみながら読んでいた本書だが、この9巻目が今でている最新刊であり最終巻である。小説を読む時、1日で読めるものもあれば何日もかかるものもある。まるで外国語の小説を原書で読むかのように、本書は一語一語を楽しみながら読み進めたのでかなりの時間をかけて読んだという印象がある。

 

 

隠密方同心の七蔵は、この頃関東地域にやって来たという押し込みの一団を追うこととなった。品川にある旅籠の主人が何者かの手によって襲われたという。それが押し込みの特徴と合致していたことから、密にお奉行様より七蔵へと調査が依頼される。

 

当時、品川というのは江戸の出入り口のような役割で、ここにも岡場所は設けられ、江戸郊外の繁華街というイメージだったようだ。島本は静かに海景色を楽しみたい人に打ってつけの旅籠で老舗として地域をまとめる役割も担っていたという。その主人は料理の腕も良く、夫婦でしっかりと伝統を守りつつ運営していたという。

 

ところがある晩押し込みがやって来て、なんと押し込みは鉄砲を持っていた。当時は種子島と言ったらしい。その種子島こそが押し込みであることの証拠であり、七蔵らは追うこととなる。

 

島本にやってきた七蔵らだが、品川は町方ではなく道中方の担当であった。しかも道中方は勘定方の支配下にあるので、町奉行とも指令系統が異なる。よって事件の子細が分からない。すでに事件から半年ほどの時がたっており、事件の証拠となるべきものは消えかけているに違いない。

 

しかし七蔵は島本に滞在しながら一つ一つの証拠に迫る。同時に島本には客があった。権三は顔に傷があり、一見恐ろしそうなのだがなぜか人の心に温かく迫るところがあった。牛を買うために品川にやって来たという権三と島本の風呂で出会った七蔵は、牛の市で聞いた情報として、品川に新しい遊技場の計画があることを告げる。

 

それにしても今回は終わり方がものすごく美しかった。ああ、やっぱり時代小説は心震わすものがありますね。本書、22年に出版されているが続きは出るのかな?著者の他の作品もぜひ読んでいきたい。

 

 

 

この9巻目は終わり方が印象的だった。