Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#916 どうすれば経験ゼロでも農家になれるのか~「農ガール、農ライフ」

『農ガール、農ライフ』垣谷美雨 著

農地を得る。

 

今年は天候が読めない。よって花粉症対策に空振り感がある。かゆいのです。私の場合。鼻より目と肌に来る。まだ今年は目には出てきていない。花粉症の皆さん、どうぞご自愛下さいませ。

 

Kindle内の本を整理しながら、どうすれば読書のスピードを上げられるか考えていた。ひとまず読みやすそうなものを次々に読んでいこうと現在がテーマになっている小説を読んでいくことにした。

 

今年に入りどんどんと物価が上がっている。毎月の食費も少しずつ増え続けており、ちょっとでも質の良いものを購入しようとBIOのものを見ると今までの何倍もの価格でなかなか手が出せない。加工品も随分値上がりしており、いつものペースで調味料を購入していたら結構な金額になっていて驚いた。これからは積極的に節約する必要がありそうだ。

 

ただ春は季節の野菜がおいしい時期で食費を抑えるのは難しい。確かに去年と比べると数十円高めの価格になってはいるが、それでも農家さんを考えると積極的に食べていきたいし、付加価値の高い野菜や果物の価値をしっかり味わいながら頂きたい。なので、食費は相変わらず増え続けております。

 

そこで未読の書籍の中にある農業関連の書籍を読むことにした。まずは小説から気軽に読んでみようと本書を選ぶ。

 

本書は東京で暮らしていた久美子が派遣切りと失恋を同時に迎え、新しい生活へと前進するストーリーだ。久美子の境遇は恵まれているとは決して言えない。まず両親はすでに他界しており身内がいない。広島から東京へ出て来た久美子は、大学を出て就職はした。ところがその会社がなんと倒産。その後なかなか正社員として勤められる先に出会えず、派遣会社に登録してキャリアをつなごうと考えた。派遣とは言え全力で勤めていた久美子。いつかはその会社から「ぜひうちに!」とのお声がかかるものと思う程に会社に尽くしていたにも関わらず、派遣切りに合ってしまう。さらに派遣切りにあったその日、一緒に暮らしている修に結婚を考える女性がいることを知る。

 

とにかく悪いことが次から次へと重なっていく。パートナーが結婚するとあれば家も出なくてはならない。次の仕事を探すにも間がかかりそうで、久美子に手を差し伸べてくれる人は全くいない。それでもどうにかしなくてはと必死に知恵を絞る。

 

久美子が選んだ道は農業だった。久美子には身内がいないために引越しするにしても保証人を頼める人がいない。30歳を超え、なかなか次の仕事も見つからない。途方に暮れていた時、たまたま見ていた番組で20代の女性がピンク色の作業着を着て、一人で農家として働いているという特集内容が目に入った。そうか、農業は女性一人でもできるのか!と、農業への関心が一気に膨らむ。

 

久美子の母親は小学生の時に病気で亡くなった。母親の実家は農家で祖父母と一緒に畑に出た記憶もある。しかし母の実家の農地はすでに売却されており、今から久美子が手にできる土地はない。調べると就業を援助してくれる市町村の存在を知る。

 

都道府県の援助は農業に限らず、人口増加を期待しての移民を推進している地域も多い。久美子もその援助の助けを受け、農業の基礎を学ぶことにした。ほぼ無料に近い金額で一から農業を教えてくれことから、今の久美子にはありがたいシステムである。ここで出会った人々は久美子同様農業経験はなく、耕す土地もない。

 

まず久美子は学校の側へ引っ越すことにした。まず解決すべきは保証人問題だ。そういえば学生時代の先輩でアパートを持っている方がいたと思い出し、恥を忍んで連絡を取った。運よく住む場所を得た久美子は一人で農業を行うという夢に向かって歩み始めた。

 

学校で学ぶことであらゆることがうまく回るのかと思いきや、卒業後の農業生活は思ったようにはいかない。土地がないのだ。いや、土地はある。しかし久美子に貸してくれる人がいない。農業を営む地域の方々は今までのやり方を崩されることを嫌うし、知らない人に自分たちが手塩にかけて育てて来た土地を貸す理由がない。例え後継者がいないとしても、赤の他人に貸してやろうという人はいなかった。

 

しかし久美子の両親は幼い頃に他界しており、逆に親世代からの言葉がむしろありがたかった。ふれあいが嬉しかった。懐かしかった。先輩の母親である大家さんや農業を指導してくれる人々の言葉を素直に聞き入れ、真摯に取り入れていった。それが次第に信頼へとつながっていく。

 

農業のノウハウよりも、どうやって農家になるのかがテーマとなっている。いざ農業を始めても収入が安定するとは言い難い。ちょっと別の角度から農業に迫った小説。