Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#346 食を「つくる」農家さんの未来

『食と農の未来』マッキンゼー ジャパン著

 農業は変わる!

 

在宅勤務の良いところは好きな物を食べる自由があることと、日中に洗濯機をまわすチャンスがあることだと思う。昨日の都内は朝のニュースでは久々の洗濯日和とのことだったので10時くらいに休憩を取った時さっと洗濯。ところが外干しした途端に雲が陰り、みるみるうちに土砂降りとなった。少ない量だったのですぐに取り込んで部屋干ししたのだけれど、これも在宅勤務の醍醐味というところだろう。

 

 さてこの頃、フードロスについて関心がある。この間はフードテックの本を読んでみた。

 

 

その時に一緒に買った本が本書で、マッキンゼーの日本支社の方がまとめた農業の世界についての本だ。コンサルタントというお仕事は知性が輝くステキな人たちの集団というイメージが先行してしまうのだが、本書を読んでますます「やっぱりマッキンゼーってすごい」な気持ちが大きくなった。とにかく読みやすくわかりやすい。読み始めたらすぐにぐいぐい引き込まれてしまうような内容だった。

 

日本は大変に農業に恵まれた環境にあり、食文化も大変発展していると思う。衛生観念もしっかりしていて、賞味期限も徹底され、包装技術も素晴らしい。そんな恵まれた私たちの周りにもフードロスは日々発生しており、畑から私たちが家で調理をする間にも至る所で食べ物が捨てられている。「いただきます」という言葉には食をもたらして下さった神様に、仏様に、農家の皆さんに、運んでくれた皆さんに、加工してくれた皆さんに、買って調理してくれた皆さんに心からありがとうという気持ちを込めるものだと学んだし、「もったいない」と言われる度に食べられない人たちもいるのだから無駄にしてはいけないと教えられた。SDGsについての記事などを読むとフードロスの話題がたまにイシューとなっており、無駄なく美味しく食べる食育だけではなく、種をまく前からのロスも問題なのかもな、と考えるようになっていた。

 

そして食が環境破壊になるという話もある。少し前だけれど、ビリー・アイリッシュヴィーガンであり、体質の問題もあるが環境保護の面からもベジタリアンを選択しているという記事を読んだ。

 


個人的には肉より魚、魚より野菜派で食の好みがそもそもベジタリアン寄りなので多分「ベジタリアンになれ」と言われてもそんなに困ることはないと思う。でもアメリカは世界1位の摂取量だし、ほぼ毎日肉食べてるよね?くらいの勢いで食べているくらいだから食の好みとしてマッチしているということだろう。そこで「環境保護」として肉を食べないというのは非常に困難が強いられるだろうなーと思った。ビリーの場合は体質の問題があるとのことだけれど、多くの人は美味しいと思って食べている肉を環境に悪いからという理由で食べないという選択を強いられることになる。私は酪農が環境破壊につながるなんて今まで想像したこともなかった。いつか関連のことを調べてみたいと思っていたので、本書は丁度よいタイミングで購入できたと思う。

 

Foodtechの本にもあったが、畜産が環境破壊となるのであれば何を食べればよいのか。肉を食べたい人のための代替ミートについてはすでにいくつかスーパーにも並んでいるので知っている人も多いだろう。代替ミートは大豆をベースとするものが今は主流のようだけれど、それでは大豆をもっと食べるようになったらどうなるんだろう。今家畜を育るために飼料として育てているトウモロコシは?そんな疑問にも本書は一つ一つ答えてくれている。

 

食卓に食品が届くまでの「事情」についてマッキンゼーフレームワークを使って、わかりやすく日本の農業を取り巻く環境変化について説明をし、今の農業がどのような状態にあるのかを8つのメガトレンドに分けて説明している。Foodtechでも科学の力が食につながり始めていることを知り大変驚いたのだが、本書でもAgritechの進展ぶりにワクワクしてしまった。数年前に農業関連の展示会に行った時、まだドローンで農薬散布するにもバッテリーが持たないとか積む農薬の量に制限があるとかで実用にはほど遠いなあという印象だったのに、すでに農業分野で実用化されているドローンがあるらしい。

 

f:id:Dahliasbook:20210818182424p:plain

 

こちらはAgritechのカオスマップで、こちらでダウンロードできる。

 

スタートアップ企業の多さにも驚くが、農業とITを繋げようというアイデアが次々と生まれていることに注目すべきなのだろうと思う。きっとこういう企業さんがそれぞれを繋いでフードロスの原因に近づいて、いつか削減の道を切り開いてくれるかもしれない。

 

昔の農業では考えられない画期的な協業が進んでいるとは全く知らずにいた。この頃やたらトマトが甘いなとか、モロヘイヤが国産だとか、豆腐がうまいなとか、スーパーに行く度に新たな感動があったのだけれど、それはこういった昔ながらの農業に加わった技術のおかげ。おうちでお皿に乗るまでの長い長いプロセスは確実に変わってきている。そんな食の事情を農家さんが畑を耕す前の段階から順に追って「こんな改善が起きてますよ」と指南してくれている良書。

 

料理好きな人もこれからの食がどのように変わるのか、口に入れるものが体を作るわけだから、Cookだけではなくfarmingの段階からも考えてみるべきだと思う。