Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#617 そろそろポアロも完全引退でしょうか~「複数の時計」

『複数の時計』アガサ・クリスティー

ポアロシリーズ第34弾。

 

昨日から初めての土地にいる。東京から新幹線で3時間程移動し、その後車で2時間ほどの距離にあるとても美しい場所だ。宿は新幹線の駅がある街に取り、もう少ししたらお土産買って戻る予定だ。

 

小さい頃から乗り物酔いが激しい方だ。地下鉄ですら路線によっては携帯画面を見るだけでも具合悪くなるほどなので、新幹線でも時に読書が辛いのだが今回は快適だった。読書は大丈夫なのに、どうしてパソコン作業はできないのだろう。謎。さて、せっかくの移動時間なので本を読もうとこちらを読み始めた。なんとなく汽車ー推理小説ーアガサの残り読まなくては、という連想からだ。

 

本書はカウントすると35弾目なのだが、34弾目との間にショートストーリーが2本ある。

 

Title: The Clocks

Publication date: Nov 1963

Translator: 橋本福夫

 

まず、本作を開いてすぐに「ああ、これは読みにくいやつだ」との感が働く。ちょっとした単語、口調が気になるのだが、アガサの作品は多くが昭和時代の翻訳なので語調の差は仕方がない。そして30冊くらい読んだおかげで、その違和感にも慣れて来た。

 

例えば、男性同士の会話は「~のだ」で終わる。下は「のだ」で検索したものでグレーとイエローで表示されている。

肝心の内容だが、今回は早々から事件が起き、名前だけではあったがポアロの存在は早くから登場していた。

 

事件はカベンディッシュ秘書派遣書というところから始まる。ここは速記タイピストというものも派遣しており、口述した文章をタイプで起こすという昔ながらの職種と言えるだろう。シェイラ・ウェッブはそんなタイピストの一人で、ある日指名で呼び出される。そしてその行った先で奇妙な事件が起きた。

 

行き先であったペブマーシュ夫人は盲目の人だった。しかしシェイラにはそのことは知らされておらず、会社のオーナーから「夫人が在宅ではない場合には勝手に家に入り、部屋で待つように」と言われていた。指定の時間に訪問するも、家には誰もいない。シェイラは家に入り、大人しく待っていたところ時計の音に驚く。そして部屋を見回すと多くの時計があることにも気が付いた。そして何気なく部屋の中を見ると、ソファの後ろに男が倒れていることを発見する。

 

驚いたシェイラ。そこへペブマーシュ夫人が帰宅するのだが、あまりの恐怖にシェイラは声も出なかった。そしてペブマーシュ夫人が目が見えないことを知り、夫人がどんどんと倒れた男に近づいていくことに注意の言葉を叫ぶ。そしてあまりの恐ろしさに家を飛び出した。そこでぶつかった男がコリンという青年で、ともに現場に向かい、知り合いの警部を呼び出してくれた。

 

現場に現れたコリンの友人ハードキャッスル警部は家の主人が盲目であること、家にあるはずのないものがそこにあること、周囲に目撃者がいないことから調査に苦戦する。コリンも調査に同席するが、実はコリンは情報部の所属で別の事件を追っていた。その調査も兼ねての同席で、どうやらその対象先がどうやらペブマーシュ夫人の家のあるエリアにあったようだ。事件が2つあるような印象だが、最もショッキングンなものはペブマーシュ夫人の自宅で起きた事件で、倒れていた男は身元もわからずで調査は難航する。

 

タイトルにもなっている「時計」だが、音のなる置時計以外、もともとこの家にあったものではないという。それが疑問を呈しているのだが、最後には少し納得がいくもそれが大きなキーではない気がしないでもない。

 

コリンの父は警察の関係者で、かつでポアロと共に活躍したことがあるらしい。その縁でポアロに頼ることになるのだが、頼るというより退屈している老人に「面白いクイズがあるよ」な軽い感じでポアロを訪ね、親しい仲なのか分からないがポアロに対する言葉遣いがひどい。これは翻訳によるものだと想像するが、ポアロはいつもの通り椅子に座り、コリンから聞かされる話からしっかりと事件の筋を見つけ出す。

 

まあ、不思議な事件といえば不思議なのだが、今回はなんとなく予想が付く部分も多い上に、ポアロの登場の仕方、頻度を見るに「ああ、このシリーズもそろそろ終わりかな」という感想を強く持つ。早いうちにポアロシリーズを読み終えなくては。

 

評価:☆☆

おもしろさ:☆☆

読みやすさ:☆