Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#878 素直な心で難問解決!ブレイクスルーについて学ぶ~「若さま同心 徳川竜之助 3~5」

『若さま同心 徳川竜之助 3~5』風野真知雄 著

家族とは。

 

どうにも未読の山が減る傾向になく、特に紙の本を読んでいる余裕がない。どういうわけだかこの2月は来客が多く、しかもこの急な寒さでリスケ案件が増えたことから、週明けからどうにも忙しい日が続いております。

 

とにかく本を消費すべく、読んでいて楽しいと思えるものから次々と読むことにした。まずは今読んでるこちらの小説、本当はゆっくりじんわり読みたかったのだが、まず読んでしまうことにする。

主人公の徳川竜之助は、現在見習い同心として南町奉行所に勤めている。名からわかるように徳川家の一員である竜之助だが、ここでは福川と名乗ることで身元を明かさず、毎日城の外での生活を楽しんでいる。

 

そもそも竜之助は田安徳川家の11男でありながら、母親の身分が低いことなどから忘れられた存在であった。だから同心になろうとも誰も気にもかけないのかもしれない。しかしひっそりと竜之助が徳川の真の一員として受け取ったものがある。それは剣術であった。代々徳川家に告がれる新陰流の剣術は、一族の中からこれと思われたもののみが選ばれ、徹底して技を仕込まれる。この代では竜之助に白羽の矢が立ち、幼き頃から研鑽を積んだ。

 

新陰流にはいろいろな流派があり、徳川がその上をいくものとは限らない。ところが各流派では打倒すべしと次々と挑んでくるものがあった。中でも本家を語る柳生の勢いは強く、最も腕の立つものを江戸へ送ってきたのだが、それはまだ15の少年だった。

 

少年は名を全九郎と言い、開かれた場へ出られないという心の病を抱えていた。しかし屋内ではこの少年に勝てる者はいない。心の闇を抱え、その辛さをぶつける剣には物悲しさが溢れていてなんとなく心が重くなる。竜之助が爽やかなだけに、その明暗がくっきりと浮かびあがってくる所が辛すぎる。

 

さて、竜之助も心に悲しみを抱える部分が一つある。それは母の存在だ。爺などはなかなかそのことを話してくれずで、生きてはいるけど誰かは知らない。ところが爺とやよいという家の者は知っていた。奇遇な縁で二人は江戸の中で出会っているのだ。

 

これからはその母と竜之助の関わりがメインとなってきそうな気がする。大体1冊で2カ月くらいの時間が過ぎているようなので、このシリーズでは同心見習いとしての活躍になるのかな。

 

竜之助は城から出たのが25過ぎ。世の中を全く知らないだけでなく、悪い心に染まっていない。剣術を学ぶこと以外に人との接触も無かったのか、とにかく表現がピュアでわかりやすい。江戸っ子の口調をまねて巻き舌の練習してみたり、かっこいい十手の構え方を練習したりとそこは青年らしいところもある。同心の仕事は町を歩きたかった竜之助には魅力的な仕事だ。加えて竜之助は仕事ができる。これは変な偏見で物を見ない(というか見れない)ゆえ、余計な情報をきれいに省いて事件の中心を見出す力にあるようだ。問題の質を捉え、小さなヒントからつながりを見出す。深く深く考える技術は、小さなヒントに気付けること。そしてそれを掘り下げて考え続けることができること。それが先輩同心よりも竜之助に変わった事件を上手くさばける能力の素ではないだろうか。

 

時間を見つけて少しずつ読んでいくことにしたい。