Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#752 検定の勉強をしてみようかと思うのです~「人形町夕暮殺人事件 耳袋秘帖」

人形町夕暮殺人事件 耳袋秘帖』風野真知雄 著

第9弾。

 

この頃心は台湾に完全に持っていかれているが、移動の際の読書は江戸へと戻る。最近読んでいるシリーズものも9巻目まで来た。

 

 

本シリーズは南町奉行根岸肥前守が二人の同心とともに江戸の不思議を解く内容である。タイトルの耳袋とは、まず根岸の耳が大きいこと。そしてその大耳で聞いた不思議な話を「耳袋」として記録したところ、写本が出て読みまわされる程になったことを意味している。

 

さて、八丁堀、浅草、深川、谷中、両国、新宿、麻布と来て、今回の舞台は人形町人形町は昔の姿を残したお店がいくつもあって行く度に楽しくなる。今回はそんな人形町で謎の事件が起こった。

 

街の名前からして、この地域は人形を扱っている。浄瑠璃や傀儡など、芝居小屋が沢山あったらしい。そこで美しい人形を作ることで名の知られた清兵衛が頓死した。胸に杭を打たれるという無残な姿で発見された。

 

ところが、いつも怜悧な根岸が全く冴えない。冴えないどころか寝込んでしまうほどにどんどんと体が弱ってきた。松平定信ですら心配するほどの憔悴っぷりで、皆「お奉行は大丈夫なのだろうか」と万が一を心配するほどであった。根岸の不在をカバーするにも坂巻と栗田、二人の同心だけではなかなか捜査は捗らない。病を知った根岸の友人たちも事件の捜査に手を貸す。

 

それにしても根岸が急に寝込むというのはどういうわけか。ある日突然不調となり、それからは何をしても昏々と眠るだけで、回復の余地が見えない。読者も思わず心配になる。同心二人が意外と頼り甲斐があるということがわかったが、しかし根岸あってこその南町奉行所だ。

 

さて、人形町である。ここに今は多くの人が忘れてしまった歴史があるという。なんとそれはそれは大きな人形が埋まっているらしいのだ。願いを叶えるために人形を埋めたという話が人形町にはあったらしい。それを勝手に地面を掘り返すと奉行所に嘆願してきた者がいた。神聖であり不吉でもあるヒトガタを掘り返してはならないという内容だったが、この話は根岸の耳にまでは届かなかったようだ。

 

さて、調査の最中おもしろいことが一つあった。同心栗田は神田を仕切る辰五郎親分と行動を共にすることが多い。この辰五郎、根がまじめで捕り物の調査にも常に真剣そのものである。辰五郎の妻は芸事を嗜み今では師匠として教えている。家事が苦手で自由気ままに生きているのだが、その母親というのがこれまた自由がすぎた。そして辰五郎はこの義母が少し苦手だったりする。

 

義母の名は「しめ」と言った。江戸の女性は名前の前に「お」を付けることが多いが、「しめ」の場合はそれができない。名前一つでも曰くありげの面白さだが、キャラクターがこれまた笑える。捕り物が好きなのだ。江戸初の女下っ引きになりたいと何度も娘婿の辰五郎に頼み込んでいるが聞き入れてはもらえない。しかしそこはしめ婆さんのすごいところで、実際に捕り物の星の跡を付けてみることにした。女で、しかも年齢もいっているので誰も疑おうとはしない。辰五郎が取り逃した情報をしめ婆さんは「尾行で得た」と話出すと、なんとそれが事件解決のカギになったから驚きだ。しめ婆さん、これからの活躍が楽しみ。

 

ところで、本当にヒトガタが埋まっているなんてことがあったのだろうか。江戸の歴史をしっかり学んでみたい。今ひそかに江戸文化歴史検定を受けてみようかと考え中。