Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#873 早く帰って有意義な時間を過ごしたい ~「若さま同心 徳川竜之助 1」

『若さま同心 徳川竜之助 1』風野真知雄 著

同心へ。

 

今年は定時に退社を目標に、退社時間の30分くらい前からデスクの整理や明日の準備に向けるようにしようと考えているのだが、なかなかうまく運ばない。せめて退社後30分以内には会社を出たいのだが、うかうかしているうちに気が付くと1時間2時間経っている。とにかく早く帰りたい。早く帰って自分の時間を有意義に過ごしたい。

 

そう考えるのも土日だけでは時間が足りないと実感するようになったからだ。週末はまずリストを作ることから初めている。朝起きて、お茶を入れ、テーブルにノートを広げて2日間にやるべきことをTodoリスト形式で書き出す。わざわざ書き出さなくても良さそうな小さなものも全部書く。例えば掃除する場所をそれぞれ全部書き出す。「断捨離」と書くよりも「引き出しを片付ける」と具体的に書いたほうが作業がサクサク進むからだ。

 

ところが土日だけではこのリストが終わらない。この頃はそれが特に顕著で出来なかった項目は後回しにされるのだが、これが仕事のための学びだったり、美容や健康のためのエクササイズなど自己投資的な内容が削られていくので、ストレスばかりが溜まっていく。加えてつい、ドラマや映画を見ながらのながら作業をしてしまうのだが、これがものすごく効率が悪い。集中すれば30分でできるのに、ながら作業だと3時間かかったりする。その上週末は呼び出されることも多く、結局出勤したりしているので物理的に時間が足りない。

 

とりあえず早く帰ることさえできたら、勉強のための難しい本を読んでみたり、時間をかけて料理をしたりともっと豊かな時間となるはずだ。しかし昨日も早々の帰宅に失敗し、帰りの電車でパワーアップできるような書籍をと本書を選んで読み始めた。

 

時代小説のシリーズものをセールの時などに買いためている。こちらは10巻以上に及ぶ作品で、著者のファンとしては楽しみながらゆっくり読もうと休みのタイミングを待っていたのだが、ついに手を出してしまう。

 

江戸時代は徳川の時代である。その徳川は将軍家の他に御三家と言われる分家があった。それぞれが出身地名にちなんで尾張紀伊水戸藩とし、大きな力を持っていた。これに加えて御三卿というものがある。こちらは将軍家から分立しており、跡継ぎを提供する役目として作られた。江戸城内に屋敷を構え、場内の門の名にちなみ、田安、一橋、清水と呼ばれていた。

 

今回のテーマは著者の作品の中でもちょっと異例かと思うのだが、時代設定はそろそろ江戸が終わる頃、主人公は徳川家の人間である。竜之助は田安徳川家の十一男。母親の身分が低かったことから、屋敷内ではすでに忘れられたような存在である。どこか達観した竜之助は非常に賢く、加えて剣の腕も見事であった。というのも、将軍家のみに伝わる秘伝の剣術を竜之助が継いだからである。

 

それにしても今やピストルの時代。鎖国している間に日本が諸外国に大きく後れを取っていることを実感していた竜之助はとにかく家から出たかった。旅に出ようとしたがそれも爺やに止められ、それではとかつてからの夢を叶えることにした。

 

竜之助の夢、それは同心になることである。城内から出ることも叶わなかった竜之助は自由に町を歩き、弱気を助ける同心に憧れていた。旅がダメならせめて江戸に残って同心にさせろと爺にせがむ。弱った爺は親戚筋の南町奉行に頼み、どうにか竜之助のための場を作った。八丁堀に家を構え、同心不足からかつての同心家を復活させるという嘘の理由まで作り上げ、竜之助は同心へと身を転じた。

 

しかし徳川の名を使うことは頂けない。そこで福川という名前を受け、これからは福川竜之助という見習い同心として暮らす予定だ。しかし慣れない城外の生活で驚くことは多々あった。まず飯がうまい。毒見などを通さずに食べられる飯は滅法うまかった。町人たちはこんなにうまいものを食べているのかと驚く。行きたかった両国の人の多さに驚き、同心たちの巻き舌をつかった言葉遣いも今は練習中だ。

 

1巻目では竜之助が持ち前の賢さから次々と事件を解決し、世間知らずを天然と受け止めた町人とのやりとりが面白い。まだ1巻目なので大きな流れは起きてはいないが、これは楽しい読書となりそうな予感だ。

 

竜之助が大衆文化を楽しむ様子にこちらもなんだか楽しくなってくる。ああ、やっぱりこういうタイミングで時代小説で気分転換がベストなのかも!と改めて思う次第。

 

ところで本書の設定はすでに書いた通り幕末だ。幕府を良く思わないものもおり、当の竜之助ですら徳川の時代は終わると言っている。ストーリーだけではなく、この時代設定にも非常に興味をそそられる。