Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#726 ももんじが美味らしい。一度食べてみたいものです ~「潜入 味見方同心 5」

『潜入 味見方同心 5』風野真知雄 著

ももんじ屋。

 

こちらも長く読んでいるシリーズものの続編。新刊が出たとの事で早速読んでみた。


このシリーズは、まずは「隠密」から始まり、現在は「潜入」として連載が続いている。主人公の魚之進には眉目秀麗の兄がいた。代々同心を継いでおり、その兄が家督を継ぎ美しい嫁お静と幸せに暮らしていた。同心としても優秀だった兄は、恐らくなにか事件の核心をつかんだのであろう。そしてその事件は兄の命を脅かした。

 

夜道を襲われた兄は命を落とし、魚之進は兄の代わりに同心として家督を継ぐことに。どうせ次男だからと釣りだ食だと毎日を満喫していた魚之進にとって、同心の仕事は全くもって「できる」気がしなかった。しかもできる兄の代わりなわけだから尚更だ。兄嫁にうっすら恋心を抱きつつ、ひとまず見習いとして役目についたのが「隠密」におさめられており、同心として独り立ちしてからが「潜入」となる。

 

そもそも味見方同心というものは、今でいうところの外食産業をチェックして悪さをしている輩を取り押さえるというものではなく、大まかに「生活」を対象としている。きっかけは食に過ぎないのかもしれないが、そこに何か「おかしいぞ」という違和感を感じ、事件を未然に防いだり大事にならないように目を見張る。

 

今、魚之進には親友の本田も味見方となり、力強い仲間を得た。とはいえ、本田も趣味は蕎麦打ちと、頼りない限りだ。しかしともに江戸の治安に貢献しており、少しずつ結果を出すに至っている。とはいえ、二人とも武士の出ではあれど滅法弱い。刀なんて完全に飾りで、襲われたら大声を上げて「助けて~」と叫ぶから武士らしくないことこの上ない。しかしそれが魚之進であり、魚之進の魅力でもある。

 

魚之進には女の友達がいる。カエルに似ているおのぶだ。おのぶはかなり変わった娘で長いものを描くのが好きとかで、うなぎやどじょうの絵ばかり描いている。今回はおのぶや本田も魚之進を手伝い事件を解決していく。今回の舞台はももんじ屋だ。ももんじとは猪のことで、江戸時代から少しずつ肉食文化が定着していたと思われる。

 

海外の食文化に比べ、日本は食肉の歴史が浅い。肉を食べ出してせいぜい数百年というところだろう。本書にある肉の種類から見ると牛、猪、鹿あたりを食していたようだが、それでも獣臭いと好んで食べる人は一握りだったようだ。それよりは初鰹だの、紅鮭だの海の幸や山の幸を好んでいたようだ。そんな日本、いまや和牛がブランド化し元来の肉食文化の国々でも受け入れられている。これもKAIZENの技だろうか。

 

魚之進の目下の調査は大奥にある。上様暗殺の情報にどこに毒が盛られているのかわからない。そして誰が毒を持ち込んだのか。けっこう危ない橋を渡っているにも関わらず、のほほんとした魚之進に読んでるほうも「大丈夫かなあ」と助け船を出したくなることしばし。

 

著者の作品は読んでいてほっこりな気分を満喫できるので、今度は長編を一気に読んでみたいと思っている。GWの準備しなくては!