Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#661 時代小説で新年を迎えました~「菩薩の船 大江戸定年組2」

『菩薩の船 大江戸定年組 2』風野真知雄 著

初秋亭の3人。

 

謹賀新年。

本年度も本との良縁、楽しい読書時間を過ごせますように。

 

年越しから新年までは著者の作品を楽しみたいと思っていた。昨年読んで面白かった作品の中に「味見方同心シリーズ」がある。なんともユーモラスですっかりファンになった。

 

 

気分よく年末年始を過ごすには著者の作品がぴったりと以前から決めていたので、年始も続きを読んだ。

 

当たり前と言われるとそれまでなのだが、シリーズものを続けて読みたいと思うには、読みたい欲を高める何かがなくてはいけない。著者の作品の場合、終わりに必ず「え、何があった!?」と叫びたくなるような事件の勃発を残して突然ぷつりと「続く」の文字が出てくるので続きが気になって仕方がなくなる。今読んでいる作品はすでに既刊の作品なのでサクサク次の号に読み進めることができるが、シリーズ中であれば読者を気が気ではなくさせるような、次が気になって気になってしょうがなくなる仕掛けにそわそわしながら次号を待つこととなる。

 

さて、幼少期からの友と初秋亭という隠れ家を作った元同心の藤村慎三郎、元旗本の夏木権之助忠継、そして元老舗小間物屋主の七福仁左衛門は、身分を超えた友情を築いて長い。それぞれの家族も公認の仲であり、親友同士支え合って生きている。

 

隠居してからというもの、彼らは一体何をして過ごすかを真剣に考えた。まずは絶景の初秋庵で日々を楽しみ、俳句なんかも始めたのはいいが、なにかまだ現役時代への未練が残る。さて、どうしようかと考え、困りごとを引き受けることにした。というのも、初秋亭の隣には番屋がある。というか、初秋亭が出来てすぐに番屋の方が越してきた。しかもそこには藤村の息子が見習い同心として詰めている。よく知る者が多いことから、初秋亭の面々も何かと番屋との行き来が増え、そしてついには自分たちも人助けを、ということに相成った。

 

今回も一風変わった事件が多く持ち込まれるが、3人はそれぞれの持ち味をいかして見事に対応していく。今回は事件そのものも面白いのだが、それぞれの女性との関わりが大川のようにゆったりと流れており、彼らの人生の軸となっていることがわかる。

 

一番は夏木だろう。元旗本であるので遊び方も3人の中では一番派手だ。深川芸者の小助に入れ込んでおり、家を与え、生活の面倒を見るため老婆を雇ってやっている。30も年の離れた小娘に入れ込んでいることを具体的に知っているのは仁佐だけだ。しかし小助の心はすでに夏木から離れつつある。

 

次に20も年下の女と再婚した仁佐は55歳で子が出来た。先妻との間に生まれた息子が今は店を継いだが、その息子の嫁より自分の嫁のほうが年下である。

 

一番淡泊なのは藤村で、俳句の師匠に少しだけ心惹かれているところだが、本人としては大問題かのようにうろたえるところがあり、一番ピュア。

 

3人の周囲にいる女性たちの存在がそれぞれの性格をうまく引き出している。江戸の女性たちは立場に関わらず芯があり、強い。武家であれば言葉少なくとも意地が見られるし、町人は逆に啖呵を切るようなところもある。女性の一言におろおろする様子が見事に表現されており笑ってしまうこと多々だった。

 

今回も捕物に手を貸す3人だが、御上の仕事とは別の依頼はすべて微妙なものばかりだ。今回は裕福な商人と結婚した美人妻たちが「夫の様子がおかしい」と調査を依頼する。今なら探偵のような仕事だが、しっかり張り込んで謎を明かした。

 

シリーズ2巻目にして、やはり終わりにとんでもない事件が待っていた。何かあるだろうな、というのは後半感じてはいたのだが、こうも大きなものとは思わなかったので、すぐに3巻目を読みたくでうずうずしている。