Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#861 豪快クジラの活きづくり~「魔食 味見方同心 1」

『魔食 味見方同心 1』風野真知雄 著

3シーズンスタート。

 

今週の火曜日からまたいつもの生活に戻ったわけだが、長く休んだせいか1週間がものすごく長く感じられた。まだまだ寝足りないような気分で一週間を過ごし、やっと訪れた金曜日!今週末は少しゆっくり休みたい。

 

今年の抱負として、出張ではない旅をしようと決めた。またいつ転勤があるかもわからないので、今のうちに近郊エリアを巡りたいと考えている。あ、あとは江戸探索!そもそもがインドア派でおうち大好き人間がコロナで益々腰が重くなり、週末に電車に乗って外に出るという気分になれずにいたが、今年は少し散策する予定だ。

 

この頃はNetflixやHuluやアマプラなど家タイムをより一層盛り立ててくれるツールが増えたせいもあり、23年はほぼ家と会社の往復であった。たまに出かけるのが出張だけだったので、今年こそは外を楽しめる大人になりたい。

 

ということで、本書である。なんだかんだと著者の作品が今のところ一番のリフレッシュになっているようで、Kindle内の未読の中からこちらを読んだ。この味見方同心シリーズは隠密→潜入→魔食という順番になっている。この作品がきっかけで著者の作品を次々読破しているのだが、時代小説の中でもテンポよく面白さとシリアスさが入り混じっていることから、読了後には毎度ある種の達成感がある。うーん、ドラマ化されてもよさそうなんだけどなあ。

 

ところでお隣の国のドラマが人気と聞くが、あらゆるジャンルにおいてある程度の視聴率があるようだ。今、日本で時代劇を見たい人なんて少ないと思うが、あちらの国の時代劇のようなもの(史劇というのだそうです)は割と人気だったりするらしい。出演している俳優さんの知名度や人気度のおかげなのだろうか、それともストーリーによるものなのだろうか。日本も明治大正くらいのものはたまにヒット作としてあがってくるが、最近江戸を描いた人気作なんてあったかな。時代小説は読者層の年齢層が高めであることが予想されるが、ファンタジーとして読める作品も沢山あるのでファンが増えて良作がたくさん出てくれる世の中になることを期待したい。

 

話しは魔食に戻る。このシリーズ、月浦魚之進という同心が主人公である。魚之進の兄、波之進は眉目秀麗のエリートであった。味見方という新設の役割でも注目を浴び、これから同心として益々力を付けるという時期に敵に襲われ命を落とした。

 

一方で弟の魚之進は見た目も波之進の弟とは到底信じてもらえないタイプの男で、次男であることから同心を継ぐことなど全く考えずにお気楽に過ごしていた。武士らしいことは何一つ不得手で、趣味は釣りとゴミ拾いと次男っぷりを発揮している。ところが兄の他界後、魚之進は兄の跡を継ぐこととなり同心になってしまった。

 

ところが魚之進、ぼんやり天然キャラでありながらも調査においては良い所に注目し、次々と事件を解決していく。本人としては本意ではないのかもしれないが、おっとりと事件を見ている間にひらめく事が真相をつくようなアイデアで今はお奉行も魚之進を認めている。

 

隠密シリーズで同心としてのキャリアを磨き、潜入シリーズで恋をし、魔食シリーズでは恐らく兄を襲った人物と敵対するのでは?とちょっぴり期待しているところだ。というのも、魔食シリーズの1作目が隠密シリーズの1作目と同じテーマが潜んでいるからだ。

 


キーワードは「鯨」。波之進は生前、鯨の姿焼きに関わる事件を追っていた。そこには山のように大きな、そして触れてはならぬ存在があったのだろう。真実に迫りつつも波之進は命を落とした。

 

そしてこの魔食シリーズの1作目で魚之進も鯨へ挑む。鯨も姿焼きから活造りとダイナミックである。この鯨の活造り、なんと生きている鯨の背に乗り、その肉を食するのだという。そんな酔狂に大枚をはたく食道楽が江戸にも存在しているのが面白い。そしてタイトルにある魔食はなんでも食べてみるという好事家たちの集まりから来ている。

 

波之進の友人の本田は料理が得意で離れに自分の台所を持っている。本田が自らの力で事件を解決した祝いの席を本田自らが腕を振るって魚之進らと宴会を催すのだが、それが鯨肉がメインディッシュであった。本田曰く、鯨はその部位によって味や食感が異なり、魚と言うよりは肉なのだそうだ。

 

思えば鯨肉、食べた記憶が全くない。今は動物愛護の観点から捕鯨を反対する意見も多く、なかなか手に入らないのかもしれない。イメージでしかないのだが、なんとなく油が多く食べ難そうな印象があるが、本田の出した鯨料理はちょっと食べてみたい気になった。

 

魚之進も鯨事件を難なく解決したはいいが、これにもまた見えない力が働いているのかもしれない。2巻目、早く読みたいわ。