Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#554 山におります~『潜入 味見方同心 4』

『潜入 味見方同心 4』風野真知雄 著

上様、参る。

 

昨日より山の深い地域にいる。関東は梅雨入りとのことだが、こちらは今のところ晴れている。むしろ朝晩ちょっと寒いくらいで、布団の中で「寒いなー」と追加寝具の購入を考えていた。あれこれ準備すべきものが多く、今日もまずは準備グッズの購入に出る予定なのだが、買い物には車で15分くらい山を降りなくてはならない。そこは一般スーパーなので、寝具や家電となると隣町まで行くことになるだろう。ペーパードライバーのくせにものすごく狭い山道を運転しなくてはならないので緊張が続く。

 

とはいえ、ものすごく景色が良く、山にあたる陽の加減が移り行く姿は神秘的ですらある。窓を開けているとうぐいすの声も聞こえ、癒される感がすごい。一日移動に疲れはしたが、機内で読み始めた本書を移動先でも読み始め、やっと気持ちが切り替わった感じだ。

 

本書はシリーズもので、まずは「隠密」という名前でシリーズが続いていた。それが「潜入」と変わり、本書が新刊となる。

 

主人公の月浦魚之進は同心であった兄が何者かに殺され、その後を継ぐこととなった。継ぐとは言ってもそう簡単ではなく、釣りをしてお気楽に暮らしていた次男坊が眉目秀麗な兄の跡目を受け継ぐべく努力する。

 

魚之進はもともと地頭の良いタイプなのだろう。そして研究肌のように一つのことを飽きずに追い続ける能力もある。非凡であるのになまじ兄が優秀すぎたために「おいらは何かが足りない」と思っているふしがある。口調も同心でありながらもあまり武士っぽくなく、そこがまた親しみやすい。

 

味見方というのは食に関わる調査をする仕事なのだが、魚之進は周りの助けを借りつつ、そしてもともと探求好きな思考から次々と問題を解決していく。今は大奥にも出入りし、毒見薬が殺された事件を担当するほどとなった。加えて小石川の療養所にいた親友が味見方となり、魚之進も俄然やる気が出てくる。

 

本書ではなんと上様の外遊に南北奉行所が総出で対応する。もちろん魚之進も食の仕事であるだけに現場に向かうのだが、仕事柄、魚之進は奉行所メンバーの中でも唯一食が提供される厨房にも出入りでき、いったいどんな裏があるのかを追求する。

 

このシリーズ、読めば読むほどどんでん返しがありそうで、今から次巻が楽しみでならない。さて、そろそろ山を降りなくては。