Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#855 辰年に龍のお話から ~「もういちど」

『もういちど』畠中恵 著

しゃばけシリーズ第20弾

 

2024年がスタート。今年は年始早々悲しい事故が続き、不安に満ちた幕開けとなった。被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。そして2024年、日本が平穏でありますように。

 

毎年有休消化のために年末年始は長めに休みを取っており、まだ本宅にてゆったりした時間を過ごしている。なかなか見ることができなかったドラマを家族と一緒に楽しんだり、近所を散歩したり、噂のパン屋に行ったりと休みを満喫しております。

 

さて、年始一番に読む本はすでに決めていた。発売とほぼ同時に購入し元旦を待ちに待ちた年末おなじみのしゃばけシリーズ。ああ、もう20作目なんですね。

 

今年は辰年。Dragonは竜や龍とも書くわけだが、本書でも龍神が登場して辰年のスタートにぴったりの1冊となった。

 

深川は東京の東部に位置しており今の台東区にあたる。水運に恵まれた地域で、人々は河川を使って移動することも多かった。その中でも大川は江戸の高速道路的な役割であり、タクシーやバスのように船頭が船を使って人や物を送り届けていた。

 

大川とは隅田川のことだ。日本橋にある長崎屋の面々も舟で移動することは多く、景色を楽しみながらつかの間の旅を楽しんでいたはず。そんなある年、煮えるような暑さが続き、体の弱い長崎屋の若旦那はいつも通りに体調を崩していた。江戸時代はせいぜい団扇や打ち水する以外の手立てがない。何をしても暑い。とにかく暑い。このままでは若旦那の体力は持たないと根岸にある長崎屋の寮へ納涼に行こうということとなる。

 

ところで中央区から台東区へ移るだけの距離で避暑が可能だったのだろうか?当時は上野を越えると江戸ではないような扱いになっていたようなので、もしかすると軽井沢的な意味合いの土地だったのかもしれない。他の小説を読んでいても根岸に寮や隠居家屋を持ったという内容も多いので、家屋が密集しておらず、風が通るので涼しく感じたのかもしれない。

 

若旦那の根岸行きが決まった頃、農民は猛暑による水不足に喘いでいた。日照り続きで農作物が育たない。多くの人が雨乞いのために神社へ出向き、どうか雨をと祈り続けた。この大量の神頼みがとんでもない事態を引き起こしていたのである。

 

大川の近くに水天宮という神社がある。他にも雨に強い神社は数多い。見えない世界で何が起きていたかというと、あまりに多くの人が雨を願ったため、雨を司る龍神が川に溢れて大変なことになっていた。見えない我らにはただ川が荒れているようにしか見えないが、実際には川は龍神だらけで水しぶきを上げていたわけだ。大川を船で渡ろうにも龍が多すぎて舵が取れない。根岸に行きたい若旦那ご一行は若旦那の体調を考えても絶対に舟での移動が必要だ。そこで利根川に住む河童の親分禰々子にお願いをして、龍神に川を渡りたいと伝えてもらうことで、若旦那の避暑が確定する。

 

禰々子によると、どうも今年は天の変わり目になる年で、いつもと異なることが起きてしまうのだという。天候への影響もすべてがこの天空での理につながっていた。

 

さて、意気揚々と舟に乗り込んだ妖と若旦那だが、約束したはずの龍神たちがわさわさと川の中で動いている。しかもよくよく見ると酒に酔っているようだ。この酒、実は長崎屋が神社に奉納したもので、息子に甘い両親が山盛りの酒樽を贈った。もちろん楽しく飲んでしまった龍神たちは、良い気分で酒に酔っている。しかし川を渡りたい若旦那たちにしてみれば荒くれた川を北上するわけで、大変難儀なこととなってしまった。

 

揺られながらも根岸に向かう道中、ここでタイトルにつながるような大事件が起きてしまう。いつもの妖の面々は大慌てで若旦那を守るわけだが、いつも通りに大わらわな長崎屋に元気付けられ。

 

2024年も読書で学びを深めたい。