Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#480 今年も夏冬、期待してます! ~「またあおう」

『またあおう』畠中恵 著

しゃばけ外伝。

 

そろそろ3月も目の前だというのにまだまだ寒い。それでも東京は日中10度くらいまで気温があがるし、凍えるほどではない。今年に入り雪害のニュースが多いが、これも温暖化の影響だと聞き驚いた。数年前、12月になっても雪が積らずスキー場がオープンできないというニュースがあったが、その時も温暖化の影響とのことだった。今年は東京でも2度も積雪を警戒するような予報が出たし、どんどんと環境問題が身に迫っている。個人で出来ること、ちゃんと考えていきたい。

 

さて、寒さのせいか、なんとなくほっこりしたい気分だったので、楽しみにしていた本書を読んだ。21年は例年冬に出る文庫本がなんと夏に出た。夏しゃばけだけでも驚きだったが、冬にもちゃんとしゃばけが出たので2倍に驚いた。


本書は冬に出た外伝だ。5つのストーリーが収められており、若だんなと長崎屋の妖たちは健在だが、いつもより若だんなの登場は控えめだ。長崎屋の裏の長屋に住む妖たち、長崎屋の離れに住む妖たちが話の中心。若だんなありきのしゃばけを楽しんできている読者には、外伝ではその若だんなの姿が見えないのでちょっとした戸惑いもあるが、普段見られない妖の姿に「ああ、やっぱりしゃばけはいいなあ」と早くも次の作品の登場を心待ちにする。

 

ここで外伝について少しだけ書き残しておきたい。2014年に出た外伝の第1弾がある。

こちらも5つのストーリーが収められており、同じように妖が話をリードしている。外伝だからいつもの長崎屋の外にある、普段スポットライトの当たらない部分が描かれているであろうことは、表紙にある丸いマークを見ればわかる。いつもとは違うんだ、と読み進めるが、妖のことだから想定外が起こることは予想済みだ。ところが外伝はそれを上回る想定外がやって来る。そう、まさかまさかの時空を超えだ。

 

時空越え、過去にさかのぼり妖たちの過去の話や若だんなのおばあ様のお話などなどなら許容範囲内なのだが、それが未来へ進むとなると話は別だ。第1弾ではなんと明治に時空が飛んだ。これは本当に心の準備が出来ていなかったので、ただただ悲しかった。というのも、長崎屋は江戸にある。たとえ若だんなが超絶健康体だとしても、200年もの時を生き、明治で活躍することはできるだろうか。妖のクォーターとはいえ、やはり未来のしゃばけに若だんなの姿を求めるには無理があるだろう。それがただただ悲しかったのだ。それもしゃばけ愛が強すぎる故だろう。

 

そして外伝2弾目にあたる本書も、やはりちょっと先の未来に飛んでいる。長崎屋はまだちゃんと江戸にあるし、若だんなも健在。だが、やはり時は流れており、人の命は永遠ではないことを思ってしまう。今回は近未来のことなので、愛読者にはちょっぴりネタバレ的に感じられる部分も。それがますます先を楽しみにする。

 

今回は妖たちが頼もしくなっているというか、より一層一致団結している上に、鳴家までもが大活躍。若だんなが寝込んでいても、ちゃんと事件を解決してくるし、貧乏神の金次なんて本業そっちのけでせっせと困りごとを解決している。やはり神だからかリーダーシップを発揮していてかっこいい。屏風のぞきなんて本体が紙でできた屏風だから水には非常に敏感で、雨や川を怖がっていた。ところが本書では雨の日にしっかり働いている。

 

とにかく長崎屋の妖たちは若だんなが第一で、たとえ外伝であってもそこに全くぶれはない。そして妖たちの若だんなを思う心はいつ読んでもほっこりする。ところでやっぱり去年は20周年の特別だったのだろうか。今年も夏冬出ないかなあ、とつい期待してしまう。