Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#856 Central LineでActonからEppingへ。ロンドンの坩堝~「ロスト・ラッド」

『ロスト・ラッド1~3』シマ・シンヤ 著

刑事と大学生。

 

久々にPC用Kindleを開く。今までに無かったコレクション別の保管が可能になったことを今知った。よし、これは書籍の整理をすることにしよう。2024年の読書は、①まずは新しいものを買わない。②手元にあるものから先に読む。そして紙の本も最小限に断捨離したい。そして③のちに必要になりそうとか、勉強しなくてはと思って購入した仕事関連の書籍を春までに読み終える、を目標とした。すでにKindle内でも未読の山ができつつあるので、読書時間を多めに確保し、没頭できる環境を作りたい。読書用のカウチが欲しいなあ。

 

さて、年始2冊目はマンガを読んだ。以前に何かを購入した時におススメに上がってきたシリーズである。3冊で完結。ロンドンが舞台となっているとあり、興味を持った記憶がある。

 

主人公のアルはアジア系の風貌の大学生。幼い頃に白人家庭の養子に入り、実の親のことは知らずに育った。学校では心理学を専攻している。大学に入ってからは友人のカラムととルームシェア暮らしを続けている。できるだけ親には負担をかけたくない。学費を捻出するためActonにある中華料理屋でアルバイトをしており、この日もバイトからの帰りであった。

 

いつものようにセントラルラインに乗り、帰宅する。特に変わりのない一日だった。ところが、アルの乗ったセントラルラインで殺人があった。被害者は現ロンドン市長で大規模な捜査網が敷かれる。

 

テレビのニュースでこの事件を知ったアルだが、部屋に戻って上着のポケットに見覚えのないナイフがあったことに気が付く。

 


そう、アルは事件に巻き込まれてしまったのだ。身に覚えのないナイフ。そして事件のあった電車に乗り合わせていたことが関係していたのかと考えていた所で、訪問者があった。

 

やってきたのはボロボロの刑事である。松葉杖を使い、体のあちこちに傷がある。

 

この人物の名はエリス警部。彼は自由奔放な捜査を好むが優秀な刑事である。たまには無茶な捜査もするようで、そのせいか今は怪我を負っている。エリス警部は同じ地下鉄に乗り合わせた乗客を探しており、今リストの中にあったアルの家に訪問したところだ。

 

詳しく話を聞き、アルは事件に巻き込まれただけと判断したエリス警部はアルとともに捜査を続けることにした。

 

このマンガの根底には多文化社会と階級社会というキーワードがある。ITの進歩がグローバリゼーションの壁を乗り越える道具となって久しく、世界各地の様子が簡単に手に入るようになった。おかげで他国との壁が低くなった気もするのだが、すでに出来上がっている社会の枠組みを崩すにはまだまだ時間がかかるだろう。むしろある分野において壁は巨大化しているのかもしれない。

 

経済力のあると所へと人は集まる。ロンドンはまさにその一つで、多くの移民がロンドンを目指すせいか、かつての英国の入国審査は大変厳しいものだった。(今は旅行者はパスポートの読み込みのみでかつての審査員との対話など無く入国許可が下ります)

 

英国には王室があり、貴族制度も根強く残っている。もともと白人が暮らしていたヨーロッパの土地であるため、伝統を有し、長く続く一族は今でも白人が多い。と考えると、黒人の血の入った嫁がたとえ次男とは言え、王室に迎え入れられたことは大きな進歩とみるべきであろう。

 

このエリス警部は黒人であり、同僚のユキはアジア系だ。警視庁にはヒシャブを身に付けたアラブの女性もおり、もちろん白人スタッフも多くいる。人種のるつぼ化したロンドンだが、階級による線引きははっきりと残っている。その見えない壁の存在を強く意識するエリス警部はアルの無実を説明すべく独自に捜査を続けるというお話。

 

あまりロンドンの様子が描かれているわけではないが、推理小説などがお好きな方には楽しく読めるシリーズ。