Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#688 サクサク読めて止まらない! ~「居眠り磐音 13」

『居眠り磐音 13』佐伯泰英 著

蘭医の江戸入り。

 

連続小説を読んでいて、止められなくなる人の気持ちは本当に本当によくわかる。実際にハマるまでには少し読書訓練のようなものが必要だとは思うが、本を開いた瞬間に物語に没頭できる小説というのも、人の好みの数だけ山ほどあるのでおススメするのが難しいところだが、本シリーズに限っては会話の相手が「大人だ!」と思える人には、「最近これ読んでるんですよー」なんて話してみたい気持ちになる。

 

そして1冊1冊が毎回読み応えがあるのでついこのシリーズばかりに手が伸びてしまうので、そろそろ仕事の本を読もうかと思っているところ。というより、これを読みたくなるには恐らくどこかにストレス溜まってるからなんだろうな、とも自分を振り返ってみたりも。

 

さて、今回磐音は大人しく江戸にいる。が、身辺何かと賑やかだ。磐音を頼りにするものは多く、すでに藩を離れているのに旧藩の主からも頼られ、両替商の今津屋などは「後見」とまで言うほどに信頼を置いている。江戸に出てから知り合った友人たちも磐音の人柄に触れ、どんどんと魅了されていく。

 

昔磐音は許嫁の奈緒を長崎の廓に売られたということを知り、急ぎ追いかけたことがあった。その道中、何やら悪者に囲まれている旅人を助けたことがあった。医師だというその男とは長崎までともに旅をし、その後も懇意にしていた。それが蘭医の中川順庵だ。

 

江戸時代、オランダから導入された様々な知識のうち、医学は最も過激なものだったかもしれない。病気には神社寺社での願掛けがメインだった時代に、薬や手術といった当時の人にしてみれば得体のしれない手段で治療するからだ。中でも臓腑を切り分け、そこから病気を判断することなど驚異であり恐怖だったであろう。

 

磐音には順庵の他にも蘭医の知人がいた。名を桂川国瑞という。父親が御殿医で、本人も非常に優秀な医師だ。磐音との縁は、許嫁であった奈緒が吉原で大夫となって以降、押し寄せる客が多く、その中に国瑞のいる集まりがあったから。順庵の紹介で知己を得た磐音は3人で酒を酌み交わすなどの交友を深めていた。

 

さて、蘭医は外国の知識であることから、たまさか攻撃の対象となった。そこへ今度は長崎からオランダ人の医師ご一行が江戸へやって来る。あれこれ準備が進む中、タイミング悪く江戸城主の娘が麻疹にかかり、その治療が必要だという。漢方医は蘭医などが!と反対して大騒ぎ。しかし娘を治すためにと、結局国瑞が直接娘に対面し、オランダ医はついたての後ろから様子を聞いて判断し、次の指示を与えるような遠まわしの作戦を取ることになる。

 

オランダ人、今でも恐らくヨーロッパ体の大きい人ランキングでは上位にあがるはずだが、あの小さな駕籠に揺られてお城まで行くだけでも大変窮屈なことだっただろう。慣れない国で、わけのわからない治療法でお偉いさんの家族を診察し、疲労困憊の江戸の日々だ。

 

そこで、磐音たちは是非とも彼らを慰労しよう!と密かに計画を立てた。本来、宿泊先の長崎屋からは一歩も外に出ることが許されていなかったようだが、こっそり船を手配して桜吹雪の大川を渡りながら食事を楽しむ。

 

磐音の深川生活の師匠である幸吉は、磐音の朝のバイト先である宮戸川での奉公を続けている。大親友のおそめちゃんもそろそろ奉公に出る時期となるのだが、親が手っ取り早く金をと茶屋に売ろうとするところを磐音の助言で今津屋へと短期奉公することとなった。おそめちゃんは絵師になりたいのだが、それには体力も必要でもう少し大人になるまでは今津屋で預かってもらうことにし、絵師の先も今津屋の紹介でどうにかあてができた。そんなおそめちゃんとおこんもオランダ人医師の接待では大活躍し、平和な日々が続いている。

 

それにしても、奈緒が白鶴として大夫になってからというもの、磐音の気持ちが奈緒から離れている風、加えておこんがその隙間に入り込んできている風なのがなんとも辛い。硬派に奈緒への想いを貫いて欲しいところだが、ストーリーとしてはおこんと祝言が整うも、直前に奈緒が登場!みたいな方が華やかなのかもしれない。

 

ああ、やっぱり続きが気になります。