Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#837 富裕層にもご満足頂ける新しい日本の旅の形~「ニッポン美食立国論」

『ニッポン美食立国論』柏原 光太郎 著

Foodies+Travellers.

 

ものすごく旅行に行きたい。そもそも会社勤めをしていると長期の休みが取れるタイミングは限られている。年末年始、GW、お盆の夏休みくらいなもので、カレンダーの並びが良ければ9月あたりにシルバーウィークがある年もある。でも、実際にシルバーウィークとなった年のスケジュールを見直してみると9月の半ばは割と忙しい時期で休みを取れたことは無かった。9月は来客や出張なんかも多いしね。

 

多くの人がこの時期にまとめて休みを取るので、海外航空券はものすごく高いし混雑しやすい。国内旅行も小さなお子さんがいらっしゃれば車での移動が可能なエリアを選ぶ場合が多いだろう。道路の混雑も楽しい家族旅行の思い出になるかもしれないが、ホテルのピークシーズンの宿泊費も結構な負担となるが、子供の休みや大人のスケジュールを考えるとピークシーズンへ集中する。

 

そして旅行に出れば現地のおいしいものを食べたいし、おいしいものを食べるのだからと財布の紐も緩くなりがちだ。食べておいしければお土産だって買いたくなる。料理好きとしては「おいしい」と思ったものをまた食べたい、自分でも作ってみたいという思いがあり、そのおいしいものは旅の場であることが多かった。昔はただでさえ出張多いのに旅とか億劫な気持ちがあったが、この頃は食をテーマに移動することがこの上ない幸せとなっている。

 

で、とある地域の食材について調べていた時、本書の存在を知った。たしかオーベルジュについて調べていた時だったと思う。早速書籍版を購入し一気に読んだ。読んでる途中からテンションが上がり始め、途中からものすごく食べたい食材がわんさか出てきてお取り寄せショッピングまでしてしまった。食べるための旅!高級ホテルやレストランを特集しているような雑誌とはまた違い、これからの旅行のあり方について、日本はどのようにインバンド市場に対応していくべきか、旅を事業としてどう育てていくかという非常に深いテーマを掘り下げた一冊である。

 

世の中に旅行好きは多く、ちょっと検索するとホテルについて詳しく書かれたサイトや「修行」と称して航空会社の上級会員を目指す記事なんかがヒットする。加えて修学旅行や卒業旅行、新婚旅行、家族旅行など、思い出作りのためのいろいろな旅のテーマが毎日どこかにアップされている。だから旅はとても身近なもので、経験によっては旅嫌いになる人もいるかもしれないけれど、リフレッシュや気分転換などのプラスのイメージが不随している。

 

コロナ禍が明け、今の日本各地はインバウンドで賑わっている。コロナ前を上回る勢いで、オーバーツーリズム現象も起きているという。確かに京都は町自体が観光地のような所なので多くの人が集まり、まずは交通から麻痺するだろうことは容易に想像でき、確かに分散化が必要だ。日本に来てくださるのは大変ありがたいが、実は京都以外にもこんなにステキな場所がありますよ!おいしい食事がありますよ!なアピールがもっともっと必要なのかもしれない。

 

そんな「地方再生」にも通ずる新たな旅のプランとして、富裕層をターゲットとしたオーベルジュでの宿泊が新たな旅の姿となりうるということが語られているのが本書だ。特に旅を「食」の面から追及し、食の持つポテンシャルが観光業界を牽引する可能性について具体例が挙げられている。

 

例えばものすごく交通の便が悪いにも関わらず、1年先まで予約が埋まってしまっているレストランや、なかなか予約の取れない料亭がオーベルジュに支店を出した話など、胃袋を満たすことを第一に、そして感性磨かれるような宿泊体験を提案することで海外の富裕層をも満足させる旅を提供できるというものだ。

 

海外の富裕層が1泊に使う金額は100万円でも少なく感じる方もいるそうで、日本の高級旅館やホテルの料金は他国に比べて低めの設定になっているらしい。もし、100万円の宿泊料が取れるのであれば、オーベルジュでは希少な地元の食材を使うことができ、それが地元へも還元される。この美食立国論、私は細々とではあるがサポートしたいと考えている。まずは自分でも利用してみることが先決かな。

 

今、本当ならば年末の帰省のチケットを取らなくてはならないのだが、どうにか数日でも旅行ができないかとスケジュールを調整中。ああ、おいしい旅って良いですね。