Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#771 次の旅行はどこにしよう~「祖母姫、ロンドンへ行く!」

『祖母姫、ロンドンへ行く!』椹野道流 著

介護と旅行。

 

このところシリーズものの記録ばかりに偏っていたので、少し別の本についても書き残しておきたい。

 

旅行に関連する書籍であれば、渡航前もしくは飛行機の中で読むのが適しているような気がするが、私はこれを復路の羽田行きの飛行機の中で読んだ。1か月近く、観光どころか休みらしい休みも取れずでストレスがたまっていた。ああ、次はロンドンに行きたいなー、パリに行きたいなー、スペインやイタリアにも行ってみたいなーと遊べなかったという思いが沸々と溜まっており、心の中は次の休みのことでいっぱいに。学生の皆さん、社会人になる前に沢山旅をしておいたほうがよいですよ。社会人になるとお休みなんて概念がどーんと飛んでしまい、折角無理につくった休みなんかも他人の都合で無くなってしまいます(涙)

 

出張先がヨーロッパであったせいもあり、次の旅はロンドンに行きたいなぁとKindle内にあった書籍から本書を選んだ。とはいえ、今回の出張で航空券の高騰に心底驚いた。サーチャージがものすごく上がっており、10万円を軽く超える明細に驚きを隠せず「え?」っと声が出てしまったほど。うーん、サーチャージだけでもこんなに高いとなるとヨーロッパ旅行はもっと先になりそう。

 

さて、まず読了後の感想として、これが実話かフィクションかという疑問が残った。本書の出版は2023年だが、舞台は恐らく90年代のロンドンだろう。90年代と思う理由は、「ロンドンそごう」という1999年に撤退した百貨店の名前が出てくるから。もしこれが実話であれば遠い昔の旅行の思い出を綴ったもので、フィクションであればその頃を舞台としたエッセイというところだろう。

 

著者は恐らく20代の頃にブライトンへ留学していたらしい。物語は親戚の集まりの中でその頃の思い出を語って欲しいと乞われるところからスタートする。それを聞いていた80代の祖母が「イギリスに行ってみたい」と言い出したことから、親戚一同の同意と支援によりあっという間に祖母との旅行が決まってしまった。

 

とはいっても80代の老婆との旅となると体力的な負担が大きいことから3泊5日程度の旅である。移動はファーストクラスで、ホテルは5つ星。ピカデリーサーカスまで歩いていること、アフタヌーンティーの流れから恐らくリッツかな?と思われるのだけれど、もしこれが当たりだとしたら、その後の流れがものすごくものすごくフィクション感が漂ってくる。

 

おばあ様は悪く言えば頑固でわがままなのだが、若い時代には多趣味でいろいろなことを学んでおられた方らしく、独特の審美眼をお持ちのようだ。英語がわからなくてもオペラを観劇しては日本の能楽や歌舞伎の共通点からストーリーを理解してそれなりの意見を仰る。また食べ物へのこだわり、美術館で作品を見る時の意見などなど、個人的にはこんな風に歳をとってからもあらゆることへの関心を持ち、学んで行きたいと思った。

 

著者は医師として、また作家として歩み始めた頃で、例え医師としての知識があるとは言え、そしてたった数日とは言え介護に加えて海外旅行というのは若い人には負担が大きい。あれして、これしてと要求が続き、時間の感覚もかなり異なる。ホテルでは各部屋に担当のコンシェルジュが1名付くことから、ホテルのホスピタリティで介護の面をカバーしてもらうにしても、観光で外に出れば自分が通訳、介護士、ツアーコンダクターにならなくてはならない。そして24時間同室にいるわけだから、若い人なら不満も募るだろう。

 

そこで著者は祖母が寝静まってから遊びに出かけた。そのあたりの下りからフィクション感が漂ってくる。まあ、それは別としてもオリエンタル急行でのお食事や美術館訪問などは今でもおそらく90年代のまま、いつも通りに運営しているから、ロンドン気分は十分に味わえたかも。

 

そろそろ世の中はお盆休みへと突入するけれど、しかも3連休だったりするけれど、またもや海外からのお客様ありで対応のための出勤となってしまった。次の旅行のことでも考えながら頑張りたいと思います。