『あたらしい家中華』酒徒 著
これは今すぐ作りたい。
この頃毎日のように「転勤したい、転勤したい、転勤したい、転勤したい、転勤したい」と唱えているのだが、一向にそのお達しが来る様子がない。そこでここは願掛けが頼りだ!と家の中を片付けている。本当に単純な理由で、転勤には引っ越しが伴うため、早めにその準備に手を付けようというだけのことである。先月は紙の書籍を本棚1つ分処分したし、洋服やキッチングッズも見直ししているところだ。
しかし、この本書の表紙には抗えなかった!書店の前を通り過ぎた時、このとろけそうな卵色があまりに魅惑的で、つい手に取り数ページ見ただけで「今買うべき」と即座に購入した。私が持っている中華系のレシピ本はほぼ台湾のもので、本書は著者が中国本土で実際に食べ、レシピを聞き、実際に作った上でのおススメが掲載されている。
とにかく著者がすごいのは、学生時代に中華に目覚め、それから現地に何度も足を運び、ついには中国駐在員になってしまうほどの中華料理愛に溢れているところだ。それぞれの地域の特色が異なるため、毎日3食中華でも全く飽きなかったと仰る強者である。
中華は北京ダックや上海ガニなど豪華なお料理ももちろん美味だが、著者が好んだのは滋味のあるおうち中華である。レシピを見ると使う材料も調味料入れても10種以下。炒める、蒸す、焼くが中心で慣れればものの数分でできるものばかりだ。献立を組み立てている時、あと一品欲しい時など本書のレシピが大活躍するに違いない。
そもそも中華と言っても上の図のように様々だ。麻婆豆腐も点心も火鍋も雲吞麺も全部中華。あまりに広大な国なので、海を知らずに一生を終える人や雪とは何かを知らない人もいるだろう。気候や環境が異なることから、各地域の味覚も異なるであろうことは想像に難くなく、省ごとに違いがあって当然くらいに考えると、「中華料理」の看板がものすごく曖昧なものに見えてくる。
家庭料理は文字通り家で食べる普段着の料理なわけだから、横浜やトロントやロンドンの中華街のようなハレの場のレストランではメニューにすら出てこないだろう。賄い料理で出るとしても、それは隠れたレシピで客として口にできるチャンスは極限られる。むしろ家庭料理は逆にハードルが高く、ディープとも言える。
おいしい家中華がなかなか紹介されていない理由は、もしかするとシンプルすぎるからかもしれない。著者のレシピ、本当に誰もが食べたい!と思えるものばかりだし、初心者さんでも作れるくらいにシンプルだ。本を買った当日に家にある食材と調味料で一品作れちゃうくらいの普段着感。それなのにしっかり中華なところがすごい。これは定番化の予感漂うメニューが山盛りである。
もう決めていることが一つある。私、週末これ作ります。
野田琺瑯の蒸し器を新調したばかりなので、まずはこちらを作ってみたい。椎茸の肉詰め蒸し料理、野菜はお好みでいくつか入れてみる予定。ひとまず、タケノコとジャガイモとタマネギから試してみようと思います。
そして断捨離中なのに、中華食器が欲しくなってきた。あと北京鍋…。