Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#808 頼りになる相棒~「眠れない凶四郎 2」

『眠れない凶四郎 2』風野真知雄 著

相棒。

遅めの夏休みを満喫中。例え在宅勤務と変わらないような日々であっても、家族といるだけでリフレッシュになるからありがたい。休みに入ってから咳も少し収まってきたし良いこと尽くしなのだが、すでに帰って働く気ゼロです。

 

さて耳袋シリーズの新しい主人公である凶四郎は、妻の死後、夜眠ることが出来なくなった。おとり調査をしている時に出会った源次を下っ引きとし、江戸の夜を守る仕事についている。夜回り先生みたいな立場といえるだろうか。

 

この捕り物のみに集中しているストーリー、今までの妖要素が少ないことから逆にものすごく新鮮に感じてとにかく面白い。耳袋シリーズを読んでいた方がより楽しめると言えば楽しめるかもしれないが、30冊以上の膨大な量になる。捕り物に集中して読むのであれば、この凶四郎から読み始めるのもアリかも。

 

根岸肥前守は南町の奉行を務めるが、とにかくなんでもお見通しである。すべて本人の経験と学びから得た知恵によるものだが、捕り物のあらすじを報告しただけで、謎が解けてしまうことも多々だ。妖談シリーズより根岸の周りを同心の椀田と根岸家の家来である宮尾が守っているが、この凶四郎もなかなか腕が立つ。

 

まず、強い。己の剣の道を極めており、三日月のように刀先を動かす手法は南町では栗田の次と言われている。そして賢い。本人は意識していないかもしれないが、深く深く考えるたちなのだろう。ちょっとしたことにすぐに気が付き、罪の芽を大きくさせない他、事件の調査でも他人が見逃すような小さなフックに異変を感じ、するすると事件を解き始めるようなタイプである。

 

夜回りとなり、凶四郎は源次とともに大晦日も町を歩いていた。この日は深川や日本橋を歩いていたのだが、寺などないはずの地域を歩いていたにも関わらず、なぜか二人の耳に鐘の音が届いた。しかもその鐘の響きはどうやら移動しているらしい。

 

この「いつもと違う」を凶四郎は事件の糸口とみているので、もちろん鐘を探した。その鐘の音は美しく、わざわざ外に出て聞いているものも多い。しかし除夜の鐘よりも早い時間の鐘の音に凶四郎は異変を案じて町内を歩き続けた。

 

源次も勘の良い男だ。凶四郎が教えたわけではないのに、怪しいものを尋問する際はさっと動いて自然と退路を断つ場所に立つ。もともとはやんちゃな男で地元では悪さを重ねてきたようだ。そして駕籠を担ぐ仕事を始めるが、相棒の病により今は凶四郎のところで下っ引きをしている。父は幼い頃に鬼籍に入り、今は母との二人暮らしだが、その母がどうしても凶四郎にご挨拶をと言ってきた。

 

ちょうど近くを歩いている時に母親が営む煮物屋へと顔を出すと、意外なことが告げられた。なんと源次の亡き父親も十手を預かっていたという。源次の機転の良さは父親ゆずりかと納得した凶四郎。聞けば源次の父親は栗田の父親から十手を預かったとのことだ。これはますます相棒として十分である。表立ってのことではないが、源次については根岸もその活躍を認めているようなところもあり、源次の相棒っぷりがこれからますます楽しみになってきた。

 

このエピソードがあってから、ますます凶四郎と源次のコンビが頼もしく感じるように。南町奉行所には辰五郎のように地元の尊敬を集める者から、その義母で捕り物が好きすぎてついに江戸初の女親分となったしめなど面白い人物が目白押しだ。きっと源次なら彼らともうまくやっていけるに違いない。

 

凶四郎の妻の事件を解決すれば、凶四郎の夜も安寧なものになるのだろうか。いつか夜の眠りが訪れるのだろうか。とにかく楽しみなシリーズ。一気に読むことにしよう。