Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#823 見えない所から深層を掴む~「耳袋秘帖 南町奉行と首切り床屋」

『耳袋秘帖 南町奉行と首切り床屋』風野真知雄 著

深まる調査。

 

このシリーズもあと残すところ2冊となった。こちらが6冊目となり、今回も南町奉行所が大活躍である。

 

この耳袋秘帖のシリーズを読み始めた頃、根岸肥前守は勘定方から南町奉行へと就任するところから始まり、根岸家の家来であった坂巻を側近とし、他に同心たちの中から側近として栗田が選ばれ調査の態勢が整った。二人は「殺人事件シリーズ」で大活躍するが、新しいシリーズからは別の部署に移ったとしてなかなか登場しなくなる。

 

そしてこのシリーズの後半あたりから根岸家の家来からは宮尾が、そして同心からは椀田が登場し始め、続編の「妖談シリーズ」を盛り上げる。キャラクターも面白く、根岸の人柄のせいか優秀かつ人自体に魅力のある人物が多い。

 

次に土久呂凶四郎という同心を主人公としたシリーズに入り、妻を亡くして夜眠ることができなくなった凶四郎が夜廻り同心という新しい調査の場を生み出した。そして、今のシリーズである。

 

この新シリーズに入り、個人的には事件の質というか入り組んだ事件の詳細など、耳袋秘帖の中では最も面白いと感じている。ことに人の心の描写は誰しもが持つ裏表を見せてくれており、痛快に感じる時もあればホロリとくることもある。

 

さて、今回もまたものすごいタイトルが付いているが、テーマは首。ある日、首のない体が見つかった。体の一部が無いとなると、人の体は余計に不気味に感じられる。しかも首がないのでこの体の主がわからない。持ち物から調査にあたるが、奉行所の面々が日夜フルメンバーで当たっても全く検討が付かなかった。

 

その調査の折、女岡っ引のしめが何やら変な噂を聞きつけてくる。なんと首が伸びる女がいると言う。それを見たのは大店の店主で、「絶対に見た」と言ってきかない。

 

この2つの首の事件が交互に織りなされ、事件はより怪奇へと移っていった。奉行所メンバーも知恵を絞り、ふりだしに戻って事件を深く掘り下げることで気が付くと数歩前進、また気が付くと一歩後退を繰り返し、事件の全貌を追う。

 

残すところ後1冊。最後までしっかり楽しむ予定。