Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#807 夜の江戸を回る~「眠れない凶四郎1」

『眠れない凶四郎 1』風野真知雄 著

新シリーズ。

 

これは一体なんだろう。咳だけが続く風邪、そろそろ4週間目に突入だ。咳止めの薬を飲んでいると、異様に喉が渇く上にものすごく太る。初期に比べると随分収まったのだが、一度咳が始まるとなかなか止まらない症状は変わらない。そして、こういうのは副交感神経というのだろうか。体が温度調整が上手に出来ていない時、咳がものすごくでる気がする。例えば暑いと体は感じているのに自分自身はそれほど暑さを感じていないとか、寒く感じているのに実はそんなに外気の温度は低くない場合などだ。あとは湿度かな。湿度高いと暑く感じるものだし。

 

さて、今年に入り耳袋シリーズを読んでいるが、本シリーズはその中でもまたいくつかに分かれている。この間まで読んでいたのは妖談シリーズで、本書から新しいものとなった。つながっているのは根岸肥前守が奉行を務める南町奉行所が主人公ということである。

 

今回あらたに主人公となったのは、土久呂凶四郎という何とも言えない名前の同心である。ある日、出会い茶屋での殺人現場に行った凶四郎、なんともむごい現場に犯人を仕留めてみせると心に誓う。そして被害者の女性の着物がどこかでみたことがあるぞとうつ伏せになっていた被害者を仰向けにさせた。顔を見て驚愕する凶四郎。なんとその女性は妻の亜久里であった。

 

亜久里と凶四郎は結婚してまだ1年ほどで、二人の年齢は10歳以上離れていた。亜久里は裕福な旗本の出で、本来身分的に足軽同然の同心などへ嫁ぐことはない。ところが、奉行所内の知り合いから勧められ、凶四郎は亜久里との結婚を快諾した。

 

旗本の娘でありながらも、どこか町娘のようにざっくばらんな性格で、武家の娘らしく凶四郎が帰った時に三つ指ついて出迎えるようなことは一切なかった。料理の腕が良いわけでも、器量よしでもない。しかし確実に凶四郎は亜久里との生活を楽しみ、亜久里を愛していた。そのことを凶四郎は亜久里の死によって改めて気付かされたのである。

 

それからだ。凶四郎は眠れなくなった。夜が深まれば深まるほど目が冴える。酒をあおっても全く眠りは訪れない。そして陽が昇る頃にやっと眠気が訪れる。これでは同心の仕事どころではない。しかしなんとか奉行所にも行っていたが、ある日夜食に庶民の通うような鮪屋で酒を飲んでは眠り、起きては飲みをやっている時、目の前に根岸らがいた。根岸は部下や岡っ引と食事をしていた。

 

驚く凶四郎。根岸は凶四郎を呼び、そして言った。「夜回りの同心をやってはくれぬか」それから凶四郎は眠れない夜に仕事をし、昼は奉行所の長屋で眠ることとなった。丁度坂巻が根岸の駿河台の本宅への配置となり長屋が空いたことから、凶四郎はその部屋へ収まる。

 

同心には相棒が必要で、その相棒は岡っ引きという。ある日の調査で凶四郎は駕籠屋に行った。おとり調査で町人の次男坊のような恰好で駕籠屋へ近づいた凶四郎だったが、誰もが凶四郎が同心であることに気が付かない。たった一人、源次という男だけが凶四郎の正体を見破った。

 

源次は駕籠屋で働くが、現在ともに駕籠を担ぐ相棒が病に倒れうまく仕事が回っていないようだった。源次の賢さに一目置いた凶四郎は、岡っ引になることを打診し、ともに夜の街を回ることにする。この源次がなかなか良い味を出しており、続きを読むのがなんとも楽しみ。きっとすぐにも十手を手にするんだろうなとわくわくしている。

 

しかし眠れないというのはつらいことだ。私が今飲んでいる咳止めは秒で眠くなる。凶四郎が眠れなくなったのは妻の事件が未解決であることが大きく影響している。心の傷を抱えつつ、凶四郎が活躍してくれることを望んでしまうのは、耳袋シリーズファンとしては当然のこと。

 

妖談より事件の解決に絞った捕り物のほうがテンポよく進んでいくような気がする。こちらもたった数冊のシリーズなので一気に読んでいきたい。