Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#818 怪奇より奇妙 ~「南町奉行と深泥沼 耳袋秘帖」

南町奉行と深泥沼 耳袋秘帖』風野真知雄 著

謎の沼。

 

本シリーズになってから表紙の絵がぐんと素敵になった。この赤い傘がなんとも江戸っぽい。

 

聞きなれない名の沼がある。深泥沼。これは江戸にあるものではなく、麻布にある旗本家の地元にある沼の名だ。根岸の耳袋はあらゆるところで読まれているせいか、怪奇関連の事件があると相談を受けることが増えてきた。

 

ある日、いつものように楽翁こと松平定信がふらっと奉行所にやってきた。そして、この麻布の主である山崎が根岸を探していたという。ものすごい形相で会ったことから根岸に斬られるかもなと不穏なメッセージを残していく。

 

その後さっそく山崎家の用人が奉行所にやってきた。そして敷地内にあるがま沼に何か異様な生き物がいると殿が非常に恐ろしがっているので、一度耳袋で有名な南町奉行に見ていただきたいというものだった。相手は旗本ということもあり、根岸は対応せざるを得ないこととなる。部下を連れての山崎邸訪問はその後異様な事件へとつながっていった。

 

そもそも、人が異様に少なかった。地元からきているはずの武士らはみな帰任したと言う。残されたのは江戸で雇用された使用人と元から江戸詰めの者のみ。あとは殿の乳母くらいのものである。

 

調査にあたったのは凶四郎と源次で湧き水のあるがま沼はそこが見えるほどに澄んではいるが、沼だけに深さの予測がつかない。ためしに2メートルくらいの枝を底に刺してみたのだが、なんとずぶずぶとすっかり沼に吸い込まれてしまった。たらいをつかって沼の調査をしてみると、確かにそこには何かがいた。

 

麻布はもともと不思議の多い町だった。初期の頃にも取り扱われている題材の一つだ。


ただ、今回はこの内容につながるものではないと根岸は判断する。しかし、話は別の所へ伸びていった。それは怪奇は怪奇であっても、芯を冷やすものではない奇妙さがある。

 

このシリーズもどんどんと終わりに近づいている。早い段階で読み終えてしまいたい。