Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#772 江戸は今日も平和です~「小石川貧乏神殺人事件」

『小石川貧乏神殺人事件』風野真知雄 著

耳袋秘帖 シリーズ。

 

さて、また本シリーズに戻る。この本を読んでいたのはそろそろ帰国日程を確定させようというところで、あちらの夜の明るさに慣れず、眠れない中で読んでいた。

 

このシリーズは登場人物はほぼ共通するが、医療ドラマのように1回きりの読み切りのような内容である。よって、ストーリーを追う必要がないので、淡々と記録を残していきたい。

 

今回の舞台は小石川。小石川と言えば植物園。そういえば今はドラマの関係で賑わっているようだ。どうしてここに植物園があるのかというと、薬の研究のための畑があったからだ。当時珍しかった海外の植物などでも薬効のあるものをここで育て研究などに使ったらしい。そしてその薬効には、隣接する診療所が役立っていた。

 

そんな小石川がこの頃あまり景気が良くないという。そして奇怪な事件がいくつか起こり、最終的に「貧乏神が怒っている。だから小石川の景気がよくないのだ。」という説が広がっていた。その理由というのが牛天神に祀られた貧乏神が居なくなったからだという。

 

奇妙な事件が大好きな南町奉行所根岸肥前守は、部下の宮尾にその調査をさせた。すると出てくる、出てくる。池の亀に背番号がついていたり、金魚を産んだという娘がいたり、いったいこの街に何が起きているのだろうか。そして小石川の景気は元に戻るのだろうか。

 

ところで、本書はこのシリーズで19冊目にあたるのだが、なんとなく話がそろそろだれて来ているような感じがしてきた。疲れた中読んでいたせいもあるかもしれないが、ダイナミックな動きもなく、どうにもそそられるような謎解きがない。ゆったりとして小さな事件が連発しているというのは、江戸の街が安全であることを意味しているだろうからそれはそれでよいことではあるが、読み手としてはもう少しパンチの効いたストーリーが読みたい気持ちになってくる。

 

とは言え、個人的には医療や食育の先駆けとも言える小石川の歴史は非常に関心のあるところだ。いろいろな小説にも登場するし、漢方などの薬効のある食材について調べてみると、やはり江戸時代の小石川に到達する。ただし、本書については期待するほど小石川についての情景描写はなく、ちょっとクスリとするような奇怪な事件がメインになっている。

 

あとこのシリーズももう少し。一気にメモを残して行きたい。