Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#761 江戸と材木~「木場豪商殺人事件 耳袋秘帖」

『木場豪商殺人事件 耳袋秘帖』風野真知雄 著

耳袋シリーズ 第14弾。

 

この頃読んでいる本シリーズも14冊目となった。

 

実は本シリーズ以外にもあれこれ読んでいるのだが、とりあえず記録を残す時間がない。シリーズものは内容を忘れがちなので早めに残したい。記録を残さないとまた同じ書籍を購入してしまったりするので、ここはしっかりやらねばと思うのだが、どうしてこうも時間のやりくりが下手なのかと日々落ち込んでいるところだ。

 

さて、今回の舞台は木場。木場方面もなかなか行く機会がないエリアなのだが、時代小説を読む上ではとてもとても重要な街であるということは知っている。木造建築が主流の日本にとって、木材というのは財を成す商材のうちの一つであった。木場はその名の通り木材の集まる場所であり、川の流れを使って材木の管理を行っていたそうだ。

 

今は少し衰えたのかもしれないが、かつてのゼネコン級に匹敵するほどの富を為していたと思われる。なんせ火事の多い江戸のこと、一度火の手が上がると被害を拡大させないために、周囲の家々をも壊してしまう。よって、建て替えも頻繁に行われたはずで、木材は重要な原材料となる。木場の豪商は権力をも持ち合わせていたとしてもなんら不思議ではない。

 

そんな木場での事件はちょっと今風だった。材木商でありながら、建築も請け負うという店の主が行方不明になった。南町奉行所では、この材木商が積み荷を高く積んでいることから一度注意を行おうと考えた。何度訪れても不在とのことで、なんらかの事件性を感じてはいたが、行方不明と聞かされたすぐ後に主は帰らぬ姿となって見つかった。それも店の木材を保管する渡しの中でである。

 

この店は少し変わった商売をしており、材木商と大工を結びつける専門商社のような役割で財をなした。つまり、自社の材木を使わせる条件で大工注文を取るのである。大工は知り合いのものを押さえておき、今で言う注文住宅のようにあっという間の工期で建ててしまう。原材料と大工を抱えていれば売価を押さえることもできただろうし、他よりも何日も早く家が建つので売上はどんどん伸びる。

 

「耳袋秘帖」という怪奇談を書き連ねている南町奉行は面白い話が大好物だ。聞いては裏を取り、耳袋秘帖にまとめている。これが非常に人気で、写本まで作られる始末だ。面白い話が好きなので、捜査の合間にもあれこれと町の様子が伝わって来る。その中にからくり屋敷の話があった。こちらも大店の主が、引退後に手妻をするための家を作った。これが仕掛けが多すぎて一般の家とは大きく異なる。そこで主が命を落とした。それも家の中で首の骨を折ったという。事件性は薄く調査はすでに1年前に終わっていたが、何やら気になる奉行の根岸は部下にこのからくり屋敷を調べさせた。すると主を失くしたばかりの材木商とのつながりが見えてくる。

 

神社仏閣などの数百年、数千年のイベント時に建物やご神体の内部をAI技術で見てみよう!というイベントなどがたまに特集されていることがある。京都だったか奈良だったかの番組を見たとき、そのあまりの高レベルな建築技術に驚いた。耐震設計はもちろんのこと、雨風にも強く、加えて造形美が美しい。釘を一つも使わずに作られているところもあったりと想像を超える匠の技だった。ああ、久々に京都に行きたいなあ。

 

ところで、根岸の部下、南町奉行所の同心である栗田の家に女の子の双子が生まれた。小説の中の出来事ではあるが、慶事にほっこり。