Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#762 ググるとパレードの様子がでます~「湯島金魚殺人事件 耳袋秘帖」

『湯島金魚殺人事件 耳袋秘帖』風野真知雄 著

第15弾。

 

この頃読んでいるシリーズ。


木場から湯島へ。タイトルにある金魚と聞いて思い出すのはお祭りの縁日だ。金魚すくい、実は一度もやったことがない。どのようなものかは知っているけど、やったことがない理由は金魚を飼いたいと思ったことがなかったからかも。

 

金魚をモチーフとしたものは夏に多く、浴衣やうちわなどかわいいものが多い。風鈴なんかにも金魚の絵があったはずだ。よってタイトルからなんとなくほんわりとしたイメージを抱いたのだが、そこは耳袋秘帖なのでやっぱり事件が関係してくる。

 

ところで日本の遊郭といえば吉原が有名だが,ここ湯島は陰間の町であったらしい。陰間とは男娼のことで、その相手はほぼ男性であったと言う。そう、江戸時代にも日本にはLGBTQの話題があったわけだ。本小説の中では40人ほどの男娼が居たと書かれている。そして江戸時代の湯島と言えば、幕府が立てた学問所があった。昌平坂学問所と言い、若い武士の息子が通っていたのだが、陰間の町と学問所の距離はえらく近かったようだ。

 

さて、本書はそんな二つの特色を捉えた事件となっている。加えてLGBTQの話題に通ずるような内容もありかなりの読みごたえがあった。湯島での事件は南町奉行である根岸の友人の息子が行方不明になったことからはじまった。丁度根岸が奉行所から駿河台の自宅へ戻っていた時のことだ。友人が息子が帰ってこないと相談に来た。若者のこと、そういうこともあるだろうと友人を安心させた根岸だったが、部下の同心栗田が、湯島の大根畑で武士の子供が亡くなっており、身分のありそうな者だったと報告に来た。話を聞き、それが友人の息子であると判断した根岸は本件の調査に乗り出した。

 

ところで湯島は今は聖堂があるが、昔は寺社も多かったようだ。そしてその土地が寺社の持ち物であったがために、ここでの調査は本来寺社方奉行が行うはずであった。しかし友人の頼みもあり南町が調査を行った。調査の段階で湯島の有力者として「くじら」の名があがるのだが、これがとても魅力的な人物である。

 

力士も驚くほどの巨漢だが、異様な魅力があるらしい。肌には張りがあり、派手な着物を着こなしている。かつてより名を知りつつも直接のやり取りのなかった根岸だが、実際にくじらに会い、なぜ湯島の人々がこんなにもくじらを敬うのかを理解した。

 

さて、友人の事件の解決の中で金魚屋がでてくる。金魚が好きすぎて、人生の全てを金魚に捧げているとう人物だ。とにかく本書には出てくる人が皆キャラクターが強く、人物の生き生きとした表現が楽しい。

 

ところで6月はLGBTQなどの単語をググるとパレードの絵が出てきてなんとも画面が華やかなので一度ご覧頂きたい。

 

本書で15段目なので、先にこのシリーズを読んでしまうことにしよう。