Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#322 甚平着て海外旅行されている面白い人の旅行記

 『つかれたときに読む海外旅日記』五箇野人 著

ディープな国を一人旅。

 

ヨーロッパのニュースを見ていると、ワクチン接種を終えた人は「ワクチンパスポート」なるものの提示で割と自由に旅ができている模様。バカンスシーズンで海外への渡航者も増えているし、イギリスなどはウィンブルドンもサッカーもノーマスクで観戦している人も多かった。そういう日本も来週からはオリンピックなわけで、いったいどうなることやら。海外旅行なんてまた先も先の話だなーと気分がなかなか晴れずにいる。

 

今年は夏休みを分散して取ることにした。幸い今年の夏は所々に祝祭日があり、どうせ使えぬ有休日、ド派手に使ってやろう!と三月に渡って1週間程度の休みを取得する計画だ。そしてその間にできればワクチン接種や歯医者などの検診も済ませてしまいたいと思っている。本当ならば近場の海外、特に台湾あたりで美味しいもの三昧したいところなのだけれど、なかなか状況がそれを許さない。この頃は航空会社さんもあの手この手で機内の雰囲気を味わえるような作戦を打ち出してきており、この間ネットで見たニュースではファーストクラス用の椅子とか、機内食とか、機内で使うカートとかを一般用に売り出しているのだとか。

 

話しはヨーロッパに戻るが、ヨーロッパの場合は飛行機で2時間程度のフライトで訪問できる外国がたくさんある。飛行機のみならず、列車で、車で、船でと移動手段も多岐に渡り、その上バカンスをどかんと月間単位で取るシステムもかなりかなり羨ましい限り。アジアで言えば南アジアあたりが似たような状況なのかもしれないけれど、国の面積がヨーロッパのほうが若干小ぶりなのでもう少し気軽に回れるのかもしれない。

 

昔ディープなアジア旅行の本が好きでよく読んでいた。絶対にこれは『深夜特急(1~6)合本版(新潮文庫)【増補新版】』の影響だと思うのだけれど、亜熱帯気候のじとっとした汗ばむような気候の中での混沌とした人の営みに「これこそディープ!」と旅に出てみたくなったのだが、結局初めてアジアの国を旅したのは仕事をするようになってからで、お仕事でお会いする人はみなディープどころかかなり洗練されていて「想像していたアジアと違うぞ」と何度も思ったものだ。

 

そんなディープな国でのディープな交わりが描かれているのが本書。お一人で恐らく治安や衛生観念に若干不安のありそうな国を旅しておられる。しかも男性が、甚平来て歩いてたらちょっと空手風だったりもしてむしろ安全なのかもしれない。

 

それにしてもこういう旅についての作品を読むたびに思うのだが、私は学生時代から一人旅をしてきたのだけれど、こんなネタになりそうな事件が起こったことは一度もない。住む段階になりようやく小話程度のネタはできたけれど、それすら全く笑いを取れないというものばかり。やっぱり人として面白い人でなくてはいろいろなものを見落としてしまうのかもと思った。

 

私もヨーロッパは何度か一人旅しているけれど、著者に掛かればこんなことが起こっている。

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いやいや、道で人にぶつかりそうになったことなんて一度もないし、窓からタバコ催促されることもなかったし、極めつけてにAssholeってどんだけ!私も一度でいいから忍者扱いされたり、空手試されたりしたかった。

 

そういえば数年前に北海道で大きな地震が起きたとき、「北海道に旅行中の人と連絡が取れない」とヘルプの電話やメールを随分受けたことがある。皆さん日本語は全くできず、乳飲み子を連れているとか、恋人の同僚とか、知り合いの親とか、「日本人の友達いるからまかせて!」と軽い気持ちで連絡してきたに違いない友人たち、私も昔世話になったしなと教えてもらった連絡先に電話して状況聞いてホテルの部屋を予約するなどのお手伝いをした。その時に思ったことがある。ホテルの方も地震でご自宅がどうなっているかもわからず心配が募ることだったろうと思うのだけれど、宿泊難民と化した外国人旅行者に温かい手を差し伸べ、明るい気持ちで対応するように心がけておられた。お客の側も「どうしてくれるんだ!」と叫んでいる人は本当に一部で、みなさん静かに対応されていたように思う。その中でも現状に悲観し嘆き悲しむのではなく、楽しんじゃえ!的な人はなんでもプラス思考でこちらがかえって笑ってしまうほどだった。さすがあの友の知人たち、レベル違う!としみじみと思ったのだけれど、この著者もきっとどんな場面でも全てを面白く受け入れることができるタイプの方なのかな、と羨ましく思った。

 

で、検索してみるとやっぱり面白い人だった。


面白い旅行記を書くにには、なんでも面白がれる人になれなくちゃダメなんだな、と納得。