Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#749 坂道の謎~「麻布暗闇坂殺人事件 耳袋秘帖」

『麻布暗闇坂殺人事件 耳袋秘帖』風野真知雄 著

第8弾。

 

最近読んでいるシリーズもの。

 

本書を読みつつぼんやりと「坂」について思い返した。「坂」といえば、坂道をグループ名にされておられるアイドルもいるし、曲の歌詞に出て来たりもするしで、名所とまではいかずとも名の知られた「坂」が都内には多い。関東平野とは言うけれど坂は結構あるのです。よってこれからも新規坂道グループはネーミングに困ることはないだろう。緩い坂もあれば勾配ある場所もあって、夏場なんかは暑さで歩くのが大変だったりもする。これを江戸の人々は毎日何キロも歩いていたわけだから健脚にもなろう。

 

そんな坂道、全て名前を思い出せずでググりつつ作品を読んだ。

 

六本木、麻布十番あたりには沢山の坂がある。本書のタイトルでもあり事件の現場は上の地図で不格好な赤丸が付いている、ちょっとカーブした坂道「暗闇坂」だ。名前の通り、この坂道は光が届きにくく昼でも暗いことが由来となっている。そしてこの界隈、なぜか幽霊の名所でもあったそうで、「麻布七不思議」という奇妙な話も残されているそうだ。

 

南町奉行 根岸の妻、おたかは数年前に他界しており、麻布の墓に眠っている。久しぶりにと根岸が墓参りに出かけた折、知った男とすれ違った。しかし根岸が記憶する姿よりも気勢がなく、一回りも老けたように見えた。その男とは、この地域で十手を預かっていた「坂の親分」である。

 

坂の親分には祝言を控える一人娘がいた。相手は油問屋の手代で、仲睦まじく親分もこの婚礼を歓迎していた。そんなある日、暗闇坂で事故が起きた。大八車には油の樽が積まれており、手代が二人、大八車を押す者が一人、計三人で力いっぱい大八車を引いて坂道を登っていた。車を引く二人は店の者で、品物を受け取りに行った帰りなのだろう。車は三人で引いても非常に重かった。坂道も半ばというところ、車を引く手代が突然倒れてしまう。残った二人は車を押さえようとするも、重い荷物を積んだ大八車はものすごい速さで坂道を下る。残された二人にはそれを止めることはできなかった。倒れた手代は意識を取り戻すが、不運なことに坂の下には娘が一人いた。突然坂を下ってきた大八車に逃げることもできず撥ねられてしまい、命を落とす。それが、親分の一人娘である。

 

娘が他界し、親分は十手を返した。気落ちした心を取り戻すことができず、酒をあおっては娘を想う。根岸は坂の親分を心配し、十手を返したとは言え、調査の協力を依頼する様、部下に言い伝える。その調査に関する報告を受けた根岸だが、それとは別に親分の娘の死にはなにか別の大きな秘密が隠されているようだと考えた。

 

この事故には何やら裏がありそうだ。一体この不思議な坂道だらけの町で何が起きているのか。それを究明する内容が本書である。坂道と幽界との間を南町奉行所は駆け回り、ついにその尻尾を掴む。

 

ものすごくテンポよく、あっという間に読めてしまった。やっぱり時代小説は楽しいなあ。