Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#822 明るいキャラクターに出会うと力が生まれます~「耳袋秘帖 南町奉行と犬神の家」

『耳袋秘帖 南町奉行と犬神の家』風野真知雄 著

女親分。

 

このシリーズも残すところ後3冊となった。本書はシリーズ内での5冊目にあたる。今回の内容もさらっと備忘録として残しておきたい。

 

一見、犬神家の一族かと思わせるようなタイトルだが、そこはまったく別物の内容なのでご安心を。

 

今、南町奉行根岸肥前守には専属と言ってもよい同心が数名いる。特に同心の椀田と根岸家に仕える宮尾は常に根岸の側で業務を支えている。また同心の土久呂は妻を失ってから眠れなくなったという体質を利用して夜回り同心という立場にある。

 

同心には岡っ引という手伝いがおり、岡っ引は下っ引きという子分を従えて江戸の安全を守っている。その岡っ引きの中に、しめという江戸で初の岡っ引がいた。しめが岡っ引になった理由は娘の旦那である辰五郎という岡っ引の仕事に憧れたことにある。もとより捕り物が好きで、夫に先立たれ暇を持て余しているしめには何よりの楽しみであった。加えてしめは体が丈夫でいくらでも歩ける上に歩くのがものすごく早い。誰もがしめのような中年女性が岡っ引であると思わないせいか、周囲に溶け込み人をさっと情報を得てきたり、誰にも悟られずに後をつけることはしめにしかできないこととして根岸も一目置いている。

 

しめは自分の名前の前に「お」を付けられることを嫌って、岡っ引になった記念に清香という名前を自分でつけた。しかし町ではしめ親分などと呼ばれ、新しい名前は定着していない。唯一の下っ引きは雨傘屋という男で、もと傘屋だったのだが事件が縁でしめと出会い、そのまましめの元で働くことになった。

 

ある日二人は久々に渋谷にでも出てみようと朝から出かけて行った。しかし神田から渋谷まで徒歩でとは健脚そのものである。いつも時代小説を読みながら思うことなのだが、私の勤め先は奉行所のあったエリアに近い。そこから自宅のあるエリアまで数キロの距離があり 途中1回乗り換えて出勤している。door to doorで大体40分。それを江戸の人たちは普通に歩いていたというから驚きだ。つまり、歩こうと思えばいくらでも歩ける距離ということだ。私もスニーカー出勤に切り替えて歩いてみようかと言う気になるが、それはもう少し涼しい時期になってからにしよう。

 

しめの見廻りには特徴がある。がしがし歩いては休み、また歩いては休む。茶屋で休む度に団子だのお汁粉だのが楽しめるので、雨傘屋もそこはとても気に入っているようだ。そして茶屋でお茶しているだけではない。ちゃんとその地域の様子も探っている。そしてその渋谷で耳に入った事件が、とんでもない大事へと発展した。

 

しめが聴いた噂は狂犬病の発生である。犬に噛まれたという話がいくつかあり、ついには命を落としたものまで出て来た上に、なにやら旗本が犬を数頭買っているという話まで出て、さっそく二人は同心へと報告した。すると同心もなにやら別の事件に関わっており、それぞれの事件が合致していくというお話。

 

それにしても、しめさんが面白くてシリーズ出して欲しいほどに魅力的なキャラクターである。読んでいて明るい気持ちになれるのでお気に入り。