Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#725 笑いたければ本所へどうぞ~「本所おけら長屋 20」

『本所おけら長屋 20』畠山健二 著

本所の魅力炸裂。

 

時代小説の中でも群を抜いて笑える作品といえば、こちら。

 

 

同じ時代小説でも己の武士道を築き上げるハードボイルド感のある「居眠り磐音」シリーズを読み終えた後だったので、いつも以上におけら長屋に笑ってしまった。ともに家斉の次代で重なるところもあるはずだから、もしかすると本所のどこかで磐音と万松がすれ違っている可能性があったかも!などと一人妄想する。

 

おけら長屋は今回も情に溢れまくっていた。おけら長屋のアイコン的存在である万造と松吉は二人合わせて万松と呼ばれ、「万松は禍のもと」と言われるほどにあれこれ事件を起こす。しかもおけら長屋には他にも強烈なメンバーが揃っており、万松をサポートする形で余計に事を大きくし、そこにまたまた万松がやらかすから毎回どたばたと大騒ぎだ。

 

おけら長屋にも浪人が住んでおり、島田鉄斎は磐音のように人柄も素晴らしく剣の腕も確かなもので、なにかと頼りにされている。長屋という環境が浪人を変えてしまうのか、今回は鉄斎までもが万松風な口調でやり取りしているのが面白い。

 

おけら長屋は町人の暮らしに焦点をあてながら、人情と笑いで日々の生活を乗り越えていく姿が喜劇の体を為しており、登場人物みな根っこが温かく、ユーモアにあふれている。そして今回は情の最たるものである「愛」がテーマでもあった。

 

家族は基本「愛」があってこそ、であるはずだ。愛があっての結婚であり、子も生まれる。しかしなかなかすんなりとことが運ばないのも愛である。松吉はおけら長屋の面々が集う三祐という居酒屋のお栄と所帯を持ったばかりで、もともと長屋の面々とは仲の良かったお栄もすっかりおけら長屋の一員となった。二人の結婚にもおけら長屋が裏であれこれと尽力してのことで、今度はその手が万造へと伸びつつある。万造は女医のお満と思い合っている。しかし、二人が思い合っていることは確かだが、これといった決定打が無いのがおけら長屋を悶々とさせていた。今回も二人をどうにかしなくては、と長屋が一丸となって大騒ぎするのだが、今回も長屋がまるっと話を収めてくれた。

 

感情をぎゅっとつかんで離さないおけら長屋。もうすでに続きが気になって仕方がない。次は9月か。楽しみ。