Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#675 今に通じるものがありますね ~「居眠り磐音 5」

『居眠り磐音 5』佐伯泰英 著

年始の磐音。

 

この頃楽しんでいるシリーズ。どんどんと引き込まれてしまい、すでにやめられない止まらない状態だ。

 


年末、というか4巻で磐音は懇意にしている南町奉行所の与力、笹塚の頼みもあり吉原に詰めていた。事件も無事に片付き、その御礼にと吉原会所の四郎兵衛から馳走を受け、ほろ酔い気分で元旦金兵衛長屋へと戻ってきた。小正月を過ぎてはしまったが、まだまだ余韻のあるこの時期に年始の話を読むとものすごく実感が伝わってくる。

 

両替商の今津屋の用心棒業で出会い、それから友人付き合いの続く品川柳次郎と竹村武左衛門とも年始から交友を深める。珍しいことに子沢山なのに酒好きで日々生活が苦しい竹村から「雑煮を食おう」と誘いがある。めでたい年明けだ。

 

磐音には亡くした親友がある。その妹と祝言を上げる予定だったが、生活苦に遊里に身売りをするも、その美貌から長崎、京都、そして吉原へと場所を変えるごとにその値は千両もの大金となった。すでに身請けするにも磐音の手にも負えないほどの金額まで膨らんでいる。

 

年始から磐音の周りは忙しい。なぜなら江戸での事件が続くからだ。そもそも磐音はなぜか事件に出くわすことが多く、加えて武道の腕を買って南町奉行所からも声が掛かる。本作でもいくつもの事件に触れている。

 

さて、ここで大きく動いたことがある。それは磐音の属した豊後関前藩の近況だ。関前藩は先の老中の失態や、主の気質もあるのだろうが、6万石の小藩でありながらすでに借金はその5倍以上に膨らんでいる。磐音と御直目付の中居は藩を立て直すべく、藩内に蔓延った悪の芽を断った。そして磐音の父が国元にて藩を守り、新たな財政を振るうこととなった。

 

そして現在藩主の参勤交代が終わりとなり、主は関前へ戻ることとなるもその費用すら捻出できない程である。磐音の父は、藩の窮状を書面にしたため磐音へと助けの手を求めた。磐音は用心棒家業から両替商の今津屋への出入りがあり、信頼を置かれている。そこで今津屋に力を貸してもらえる様、頼んで欲しい。願わくば主の関前行きの費用も貸してもらいたい。父の手紙は切実であった。

 

加えて、藩主の帰城に伴い、分家筋の嫡男が江戸家老としてやって来るという。磐音は新しく藩が取った体制を支えるべく翻弄する。そして許嫁奈緒のことを片時も忘れず、そして遠くから見守ることを決めた。

 

とにかく磐音の人柄に惹かれ、自分もこう実直謙虚に生きなくてはと思う。そして藩の財政というのは企業に通ずる部分もあり、関前藩のような弱小の組織がどうのように借金を返していくのか、どのように周りからの信用を盛り返すのか、どのように人を育てていくのか、とにかく楽しみで読書の手が止まりません。