Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#691 親公認になってしまうとねぇ~「居眠り磐音 15」

『居眠り磐音 15』佐伯泰英 著

父に会う。

 

この頃、暇さえあれば続きを読んでいる。

 

ありとあらゆる辛さの中で「会いたい人に会えないこと」と「会いたくない人に会わなくてはならないこと」ほど辛いことはないらしい。磐音は許嫁の奈緒が吉原で太夫となり、もう自らの力では取り戻すことは出来ないとこれを運命として考え始めていた。奈緒の姿を追って関前から長崎、京都、金沢、江戸と追い続けるほどの思いをどうやって閉じ込めたのだろう。

 

愛の悲しみを埋めるには、やはり新たな恋心が必要なのだろうか。磐音が世話になっている両替商の今津屋のおこんは、磐音の傷を埋めつつある。今津屋というつながりだけではなく、磐音が暮らす金兵衛長屋はおこんの父親が大家でどこか縁があるようだ。

 

磐音の人柄に惚れない人はいないだろうが、おこんは磐音の身の回りをさりげなく世話するなど、もっとも磐音に近いところに居る女性であることから、なんとなく予想はついた。それが本書で少しずつ現実化してくる。

 

日光参詣のために江戸入りしていた磐音の父親は、江戸での息子の暮らしが藩を超え、ついには幕府の仕事までをも担うことに驚きを隠せない。磐音の活躍のおかげで上様にも謁見し、晴れ舞台の場にも足を運んだ。久々に息子と会い、そしてその後ろにおこんという女性が支えてくれていることを知り、二人の仲を歓迎する。

 

こうして周りからどんどんと二人は認められるようになり、ついに磐音も奈緒を「過去」として捉えるようになる。ああ、なんだろう。奈緒への愛を貫いて欲しかったとどこか期待していたので少し残念。

 

関前藩の特産品の取引は、どうにか軌道に乗り始めていた。が、やはりおいしい話に食らいつく邪魔者がいる。かつて磐音達を引き裂いた藩の企みほどではないが、磐音の父が自ら指名した江戸の老中が財政を引き締める藩を横目に、江戸で散財三昧の生活を送っていた。ついには国家老である磐音の父を襲うまでとなり、磐音によって最後の膿が落とされた。

 

関前藩の発展が今後の楽しみになりつつあるのだが、やっぱり奈緒と磐音は別の道を歩かざるを得ないのだろうかと考えると切なくなってくる。