Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#664 追手の思惑~「居眠り磐音 2 寒雷ノ坂」

『居眠り磐音 2 寒雷ノ坂』佐伯泰英 著

藩が迫り来る。

 

年末にたくさんのシリーズものを購入した。本書は50巻を超える大作で、そう簡単には終わらないぞという安心感があることから、早いペースで読んでいくことにした。

 

 

2巻目の巻末に著者の対談があり、お相手は俳優の谷原章介さんだった。読み進めると、なんと本作は映画化されていたらしい。

 

 

確かに私も時代小説を読みながら映像化にあたっての配役なんかを妄想したりすることは多々ある。本作も映像化にはぴったりで、2巻目にして豊かな妄想タイムをむさぼっていたのだがすでに映画化されていたとは!

 

豊後関前藩の若者三名が江戸のお役目を終え故郷に帰った日、いきなりそれぞれの人生が狂ってしまった。慎之輔はあんなにも思っていた妻を不貞があったと成敗し、その妻の兄である琴平はそれに怒り慎之輔だけではなく相手と噂された男や、その噂を流したものを亡き者にする。磐音はその事態を収めるべく、親友である琴平に対峙し友の命を絶った。この事態を苦に、磐音は藩から去った。

 

2巻目は江戸での生活を始めたばかりの磐音のその後がつづられている。浪人らしく両替商である今津屋の用心棒の仕事などで口に糊する磐音であったが、戦いの場で傷を負ってしまった。休んでいる間にあっという間に持ち金も底をつく。水を飲んでどうにかごまかしていたところへ、今津屋で出会った浪人、品川柳次郎からの誘いで用心棒の仕事を探すところから物語はスタートした。

 

磐音は柳次郎をすでに友人とみなしており、信頼もしている。そして、同じ独り身の浪人であることから共に職探しをしていた。この日も深川を出て新宿まで出向くのだが、結局磐音の懐が暖まることはなかった。近所の子供である幸吉に世話してもらった鰻をさばく仕事も再開はしたが、それでも家賃をため込んでしまう始末だ。しかし、こうして新宿に出向いたことで、磐音の人脈も広くなってくる。今回は南町奉行所の与力、笹塚孫一との縁故が出来た。きっとこれからも何等かのつながりが出てくるのでは?という予感が止まらない。

 

磐音は基本的に浪人として小さな仕事を請け負うことが多いのだが、その場では敵を倒したとしても、報復を目論む輩も多い。磐音は自身の周囲へ敵の怒りが及ぶことを数度経験することとなった。その中には命に係わるものもあり、磐音は心を痛め復讐を誓う。

 

磐音が脱藩したキッカケとなった事件は、もちろん江戸の豊後関前藩の屋敷にも届いていた。まだ磐音らが江戸に居た頃、藩の未来を憂い、磐音は若者たちを集めて修学会という学びの場を立ち上げた。実際に藩の財政は厳しく、修学会の提案にて利益を生む道を得たこともある。ある日、磐音の長屋に何者かが押し入った。貧乏浪人の長屋に残される金目のものなど何もないが、磐音は藩とのつながりを感じる。

 

そしてその後、実際に藩の人間が長屋へやってきた。それは修学会の仲間、上野伊織。身分は磐音よりも劣るが、勘定方としてしっかり活躍をしていた。伊織は国元で起きた磐音に関わる事件について疑問を抱いており、仕組まれたことではないかと磐音へ告げる。一方の磐音は自身が藩を離れたことですべてが片付いたものと考えていたのだが、藩を出た後にも事件はまだ脈々と息づいていたことを知る。やはり藩には何か隠された事情がある模様だと知った二人は、秘密裡に事を運ぶこととした。

 

藩で起きた磐音の過去、今まで口に出すことはなかった磐音だが、両替屋の主、番頭、そして女中であり長屋の主の娘おこん、友人の柳次郎、与力の笹塚には自ら状況を説明した。そして他者から見ても磐音に対する藩の悪意はまだ終わっていないとの意見に、みずから藩政へ一歩近づく。そして読者は許嫁であった奈緒へも近づくことを祈りたくなる。

 

力強い作品の風格と、磐音の人柄に読み手も元気が出てくる。

ところで、谷原章介さん、今津屋の主の役だったんですね。私ならあの方をとまたも一人妄想が続いている。