Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#689 会えばそれがしは狂います~「居眠り磐音 14」

『居眠り磐音 14』佐伯泰英 著

日光へ。

 

結局このシリーズが頭から離れず、週末も続きを読んでいた。

 

2月もそろそろ半ばということで、本腰入れて仕事の資料を読まなくちゃ!なのだが、全くもって気合が入らないのはなぜだろう。モチベを引き下げる要因ばかりが頭に浮かぶが、なにかやる気を引き立ててくれるものはないだろうか。そんなことを考えているうちに1冊読み終えて、また次作を読んでしまい、完全に磐音ループに絡め捕られている。

 

さて、ここでまた磐音は旅に出た。今度の行き先は日光で、将軍家が日光参詣に諸大名を率いての御成りとなるも、その膨大な費用の補填のため町民もその荷を負うこととなった。磐音が世話になっている両替屋の今津屋もその一人で、此度の参詣の費用は両替屋衆も同道し、現地での用立てに当たることとなっていた。

 

一応、「後見」と言われている磐音なので、もちろん同道する予定なのだが町民の傍に脇差の浪人が立っているのもよろしくないと、磐音の剣の師である佐々木道場の兄弟子で、将軍のお側に控える速水より、勘定方の家来として同道するようにとの通知があった。

 

磐音が日光へ向かうことから、不在の間の用心棒として、師の佐々木道場より数名の剣士が今津屋の離れに宿泊し、店を守る手配などを取り、着々と準備は進んだ。しかしその出立の直前のことである。磐音は急遽道場に呼び出され、師の元へ駆ける。そこには兄弟子速水も同席しており、この日光参詣における新たなミッションが磐音に告げられた。

 

そのミッションとは。本来将軍の参詣に次代は同席せずに城に待機することになっていた。そもそもこの日光参詣もそう頻繁にあった話ではなく、将軍家の威光を保つための行事といった側面もあったようだ。とにかく、今まで次代を継ぐものが共に日光に行くことは一度も無かったのだが、此度は嫡男家基が日光へ向かうと言う。磐音はその警護を託された。これは限られた一分の人間のみが知る、超極秘ミッションだ。

 

次代の家基は聡明な若者であるとの評判だった。会うとその通りの人物で、明るく物おじせず、まっすぐに物事を捉えて采配する能力に長けていた。磐音はこの青年に自分の過去の話や奈緒との経緯までをも告げ、すっかり信頼を得る関係となる。

 

一番応えたのは、奈緒を追い続けたというのに、なぜ奪ってまで取り戻そうとしなかったのか。そしてなぜ堀の外から幸せを願うなど、諦めたかのようなことを申すのか、会いたくはないのか、と家基が問い詰めた時だ。磐音は言った、

 

「会いとうございます。ですが、会えばそれがしは狂います」

 

ああ、ここまでの想いが逆に気持ちを離れさせることとなるのだろうか。そこへあれこれと世話を焼き、深川らしい勢いと屈託の無さをもつおこんに心なびいてしまうのだろうか。うーむ。

 

立派に警護を終えた磐音は将軍にもその名を覚えられるほどの人物となる。この日光参詣には磐音が籍を置いていた豊後関前藩も同道しており、そこには国老である父の姿もあった。磐音の活躍により関前藩藩主もそして父も上様よりお褒めの言葉を頂く。

 

坂崎磐音はどんどんと世に羽ばたいていく第2幕がスタートしそうな予感。