Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#692 夜明け前のような清々しさに涙です~「居眠り磐音 16」

『居眠り磐音 16』佐伯泰英 著

ついに。

 

この頃読んでいるシリーズもの。ちょっとの隙間時間に読んでいるだけなのだが、ぐいぐい引き込まれてどんどん読み進めたくなる。

 

さて、15巻で磐音はついに認めた。自分の中での奈緒の存在に決別し、おこんを受け入れることに。周りは奈緒を思っていた磐音の気持ちを良く知っていることから、磐音の決断にむしろ「それで良いのか!?」との思いを深めている。

 

そして奈緒にも一つの変化があった。長崎、京都、名古屋、金沢、そして吉原と奈緒は廓に着くたびに次々と行き先が変わり、ついには吉原で千両以上の身請け金にて売り渡される。もちろん磐音に奈緒を取り戻すための金はない。しかも数百両だった奈緒の身請け金が今や千両以上となっているだけに、より一層手に届かない存在となっていた。

 

奈緒は吉原でどんどんと名をあげ、白鶴太夫として吉原でも一二を争うほどとなる。もう磐音の知る奈緒はこの世にはいない。そこにいるのは白鶴とかつての関前城からその名を取った太夫となった女性がいるだけ。磐音はどうやって心に折り合いをつけているのだろう。決して結ばれない、それが運命と諦めることができるものなのだろうか。

 

その白鶴太夫に身請けが決まったという噂が流れた。市井にまで流れてくるほどの噂となり、それは磐音の耳にも届く。吉原に近い筋から直接磐音に白鶴太夫が山形の紅花で成功した商家へ嫁ぐと告げられるが、磐音はやはり「白鶴太夫奈緒ではない。我らは関前を出た瞬間から袂を分ける運命だった」と頭では納得するものの、心には複雑な感情が残っていたようだ。

 

果たして奈緒の身請けは無事に終わるのだろうか。身請けの話が出た後のこと、奈緒の周囲が突如として不安なものになった。身請けを阻もうとする何者かが吉原に蠢いており、磐音は奈緒が無事に吉原を出ることを支えることとなる。奈緒と磐音の運命、それぞれの人生についてのターニングポイントとなるようなストーリーだった。

 

本小説は「尊い」と思われる瞬間が多々あり、生き方としての学びが深い。武士道に魅せられる点は多いし、美学と言っても過言ではない己との向き合い方に「こうありたい」と思える反面、どうすればここまで鍛錬できるのだろうかという恐れもある。日頃の生活で不平不満ばかりの自分を反省。