Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#674 字から受ける印象~「後宮の烏 6」

後宮の烏 6』白川紺子 著

切り離す。

 

旧正月とやらがやってきまして、お客様ラッシュもやっと折り返し地点です。あと1週間、がんばる。外国人観光客の横で日本のおもてなしを見ていると、観光業の素晴らしさに感動する。どんな時間でも爽やかに温かく対応してくれるし、嫌なそぶりなど全く見せない。携帯で遊んでいる人なんて一人もいないし、私用電話に待たされることもない。そういう小さなことが外国人の方には響くようだ。ただ、お店でショッピングしてラッピングにかかる時間はどうにかならんのか。なんであんなに過剰に包むんだ@デパ地下のお菓子、は改善して欲しいとのこと。確かにわからないでもないな。

 

さて、この頃読んでいるシリーズ。現在は7巻まで発行されているので、早々に読んでしまうことにした。

 

6巻目に入り、「漢字の妙」についてより楽しみながら読んでいる。というのも、無理だとはわかっていながらも、この作品を私ならどう英訳するか、という側面からも読んでみたからだ。本書、アニメは少女漫画風?なタッチで若年層をターゲットとしたかわいらしさもいいのだが、全作見たわけではないけれど主人公同士がキラキラでなんとなく恋愛を奇想させるような設定に違和感を感じた。6巻まで読んでみると、皇帝高峻も烏妃寿雪も社会を支えるという自覚があり、歴史に翻弄されながらも政治を司り、国を守る能力に長けている。確実に非凡で有能な人たちだ。アニメ風もいいのだが、もう少し大人テイストでの表現法が似合う気がしてきている。

 

英訳しながら思ったのだが、漢字というのはそれ自体の持つ複数の意味や字面から感じるアート的な雰囲気、更には音/訓読みの与える二重の音の楽しさなどなど、私なんかの力量ではとてもじゃないけど翻訳できない。英詩を読む際にリズムや韻、他にも視覚的なメッセージや音的なメッセージ、単語一つ一つの持つ複合的な意味や味わい方など、こちらも和訳が難しい。本作のように逆の場合もしかりで、漢字の見せる妙には物語を大きく広げる深さがある。

 

さて、寿雪は一心胴体であった神、烏漣娘娘を切り離すべく、高峻らとともに策に及んだ。しかし初代烏妃の業は深く、歴代の烏妃の悲しみが一気に押し寄せてくる。そして、息を吹き返した神が寿雪の体を乗っ取った。

 

寿雪の意識は遠くへと飛び、変わりに神が後宮に降りてくる。それは寿雪の体や、他の媒体を通して己の言葉をつぶやき始める。見えない世界が急に人間の下へ降りてくるのだが、なんとも弱くまるで子供のような面がある。

 

高峻は寿雪を完全に自由にすべく翻弄し、どうすれば寿雪の意識を取り戻せるのか、どうすれば見えない世界との柵を解くことができるのか、知恵を絞る。寿雪はまだ16歳だ。少女であるにも関わらず、数々の辛苦が確実に寿雪の中で力に変わっていく様子は圧巻。

 

まだ終わりは見えないが、ディズニーあたりで作品化してくれないかなあ、なんてことを考えている。