Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#676 ええ!もう終わりなの!?~「後宮の烏 7」

後宮の烏 7』白川紺子 著

最終話。

 

年末より読み始めたシリーズ。本書が最終話である。


1巻から5巻まではとにかく圧巻の設定で、大陸を思わせる国の王室が舞台となっている。時代設定も文明前で、王宮には数名の妃が暮らしていた。妃らの暮らす場を後宮という。その後宮にたった一人、王とは褥を共にしない妃が居た。名を烏妃という。

 

烏妃は代々続くものだが、血縁による代替わりではない。現妃の代が終わりに差し掛かる頃、烏妃の住む夜明宮に住む金色の鳥が矢を放つ。その矢を受けたものが次代となる。

 

現烏妃である寿雪は、前王朝の血を引く者で銀髪であった。銀髪は前王朝一族の特徴とされ、残された一族は現王朝の命により命を奪われた。寿雪の母は遊里に身を売られ、寿雪とともに髪を染めることで難を逃れていた。ところが母は追っ手に捉えられ、寿雪は一人で逃げ延びそのことを苦としている。幼い寿雪は金の矢が届く幼少期までを奴隷として過ごしていた。

 

烏妃という存在は国神とも言える烏漣娘娘とをつなぐ巫女のような役割といえば良いのだろうか。巫女であれば、神の言葉を聞き、時には身を貸すことで現世と幽世を繋ぐものと想像するが、烏妃は体内に神を抱えている。新月の夜になると烏漣娘娘はその羽を伸ばして空を舞う。烏妃にとっては身を切られるほどに痛みを伴い、代々の烏妃もその辛さに耐えられないものが何人も続いたという。

 

現王の高峻は寿雪と少なからず何か心つながるものがあると考えている。連盟のような同志のような、心のつながりが二人を支え、守り、成長させていた。もしかすると愛もあったのかもしれないが、その関係を深めることのできない己の立場に苦悶した日もあっただろう。

 

高峻は、幼くして後宮へ入り、烏妃となっては後宮から出ることのできない烏妃を憂いた。烏妃というよりは、寿雪を縛る「烏妃」という立場を断ち切ろうと歴史を辿り、大きな変化を志す。本巻はその最終章であり彼らの人生の終わりまでを映し出している。

 

6巻あたりから烏妃の存在を断ち切るためのストーリーへと移るのだが、そのあたりからものすごく駆け足となり、最終章の7巻に至っては全速力で走っているかのようにあっという間に物語の中の時が流れていく。シリーズものが終わる時、この後主人公たちはどうなってしまうんだろうという、物語が終わってしまう寂しさやまだまだ読み足りない気持ちなどが入り混じる。本作はその点では綺麗に読者を納得させてくれるのだが、とはいえやはり鍵となる烏妃や神々とのくだりはもっとじんわりと読みたかったかなと思う。

 

ハリーポッターまでとはいかないが、アジアらしい世界観のある強烈なファンタジーだった。またこんな楽しい作品に出会いたい。