Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#697 江戸から西国までの船旅~「居眠り磐音 21~23」

『居眠り磐音 21~23』佐伯泰英 著

旅の始まりと終わり。

 

この頃続けて読んでいるシリーズもの。3冊くらいまとめて書き残すのが丁度よい感じだ。

 

武家が主人公のストーリーを読んでいると、どこか背筋が伸びるような気持ちにさせられる。丁寧な暮らし方というのは、実は武士道にも通じているのかもしれない。結局は己と対峙し、どのように人生を生き抜くかが大切なわけであって、ゴマすりだけに必死で全く仕事をしないおしゃべりな上司にぐったりしている場合ではないのである。曲解も曲解かもしれないが、この上司が反面教師となり、武士道の真摯さにより一層の魅力を感じるのかもしれない。

 

磐音はまさに上司やメンターとしてぴったりの人物で、嘘いつわりなく実直な人だ。自分を飾らず、相手を尊重し、人の話に耳を傾ける。そんな磐音の生き方に憧れはあるが、誰もが磐音のように広大な心と巧みな能力を持って産まれてくるわけではないので、せめてメンターとして小説を読み続けながら学びを得たい。

 

さて、21巻に入り磐音と今津屋のおこんの結婚が真実のものとなる。この度磐音とおこんは豊後関前へと向かうこととなった。関前は磐音の実家で、佐々木道場の跡継ぎとして養子となる前に先祖の墓前に挨拶する目的での旅である。

 

関前までは船旅で、磐音を狙う敵の襲来を受けつつもどうにか無事故郷へと到着した。港には国家老である磐音の父を始め家族総出で迎えるほどの歓待っぷりだ。緊張し通しだったおこんもすぐに坂崎家の家族に溶け込んだ。佐々木道場から磐音を慕う兄弟弟子の辰平も関前へと同行し、関前はより一層賑やかになる。

 

磐音の佐々木道場への養子については、両親としては思うところがあった。坂崎家の長男でありながらも脱藩した磐音が籍前藩に戻ることはないと頭では理解しつつも、特に母の照埜は磐音がいつかは関前に戻ってくるという期待を捨てきれずにいた。しかし将軍家の日光参詣より磐音が幕府の任務にも関わり、将軍にも認められる存在であると知ってからは、それが磐音に与えられた使命と息子を送り出すしか道はない。

 

さて、おこんは関前に着き、今津屋から渡された荷物を開けた。それは今津屋のお内儀からの贈られた行李で、中には数々の婚礼用道具が詰め込まれていた。お内儀のお佐紀は磐音実家への配慮も含め、関前で仮婚礼をあげよとの意で贈ったもので、磐音たちは関前の家族と共に、坂崎磐音とおこんとして式を執り行った。

 

関前藩は先の国家老の怠慢で藩内に腐敗が蔓延っていた。かつて磐音により一掃されたかと思いきや、藩が特産品で銭を稼ぐようになってからは、またもや雲行きが怪しくなって来る。国家老である磐音の父は再度藩の不正に取り組むこととなり、磐音らの力を得て解決する。

 

藩の特産品の販売において力を貸した商人は、隣の福岡藩の城下からやってきた人物だった。なかなかの実績を残すも、どこか怪しさを感じた磐音の父は元の勤め先の商家に問い合わせ、悪の芽を摘む。その福岡藩の商家は今津屋と同じ両替商で、磐音の評判を聞きつけ是非とも福岡に寄って欲しいと願い出る。ひと月ほどを福岡で過ごし、その間の出来事が21巻に収められている。

 

22巻は福岡から江戸までの帰路で、久々に南町奉行所が登場だ。過去の事件でお縄にかけることのできなかった悪人を追いかける話だが、前半は全くもって磐音が登場せず別のお話を読んでいるような気分。友人の品川柳次郎の恋などあれども、やはり磐音がいない江戸はどこか寂しい。磐音たちが江戸へ戻り、22巻は終わる。

 

やっぱり時代劇は気持ちが前向きになれて良いですね。