Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#648 ついに大作を大人買い!~「居眠り磐音」

『居眠り磐音 1』佐伯泰英 著

友を亡くす。

 

今、帰国の便を待っている。12月がこんなにも多忙になってしまったのは2度の海外出張が入ってしまったためで、その隙間に師走活動をしていたからだ。12月は移動も多く、ずっとずっとバタバタと走り続けているが、一先ず今までコロナにも罹患せず、健康で過ごせていることに感謝。

 

さて、Amazonが50%ポイント還元のイベントを開催する時、大体夏冬の2回開催されていると思うが、私にとっては「大人買い」のチャンスとして毎年大量購入に挑んでいる。特に時代小説のシリーズものは長く続いたものが多く、20巻以上からなるシリーズも多々だ。そんな中で、本書はすでに50巻を過ぎており、人気コミックレベルの巻数を誇る大作で、ずっと読みたいと思っていた。今回はこのシリーズの他、いくつかの作品をシリーズ買いし、ほくほく状態で日々Kindleが手放せない。どれから読もうかな!と考えるだけでワクワクが尽きない幸せな日々を満喫中だ。

 

一番最初に本書を読もうと決めたのは、今回購入したシリーズものの中で一番の長作だからだ。さらには著者の作品を読むのは初めてなのに、なぜか「絶対渋い系の武士が出る」と決めつけていて、なかなか手が伸びずにいたのだが、今は自分が寡黙な武士のように淡々と仕事をしなくてはならない状況下にあることから「よし、今だ」と早速読み始めた。

 

圧巻。導入部から圧倒される。ものすごい勢いで登場人物の感情が押し寄せてくる。ぐるぐると渦を巻いたかと思ったら、あっという間に飛び散り、気が付いたらたった一人で荒野に立っているような「無」が訪れる。

 

ここは豊後。3人の青年がそろって藩のために江戸詰めとなった。それぞれ剣の腕も立ち、幼い頃から離れることなく兄弟のように暮らしてきた。実際に妹を娶り家族となったほどである。藩を改革しようと志も高く、活気と若さに満ちていた。

 

慎之輔は琴平の妹、舞を娶ってすぐに江戸に来た。3年の勤めを終え、今やっと豊後へ帰ることが叶う。早く妻に会いたい慎之輔は帰省への足もどこか浮き立っている。さらに琴平のもう一人の妹、奈緒は磐音へと嫁ぐことも決まっており、三人の結束はより強固なものとなるはずであった。

 

懐かしい故郷がもうすぐというところで、磐音の妹、伊代が兄たちの到着を今か今かと待っていた。なつかしい顔の出迎えに喜ぶ三人であったが、兄の磐音は妹の様子が気がかりである。何かを語りたそうな、何か心に秘めたものがあるかのように見えた。

 

そして事は起こった。故郷に帰った日の夜更け、慎之輔が妻の舞を成敗したという。不貞を犯した故慎之輔自らが刀を振るい、その亡骸を受け取る様、琴平の家に使いを出した。琴平は急ぎ慎之輔のもとに駆け付けるも、妹は無残な姿となっており、しかも不貞と聞き動転した琴平も怒りに任せて友に刃を向けた。

 

琴平はその足で不貞の相手と言われた者のところへ向かい、その男へ怒りをぶつける。すべての怒りは琴平の刀を通じ相手へ突き刺さる。事を憂い、藩は琴平を取り押さえろとの命を下すも、仲間内でも最も剣の達者な琴平である。加えてすでに何人もを斬り、正気ではない琴平はさらに手の付けられない状態となっていた。

 

友の死、友の狂気を知った磐音は琴平のもとへ向かった。磐音の剣術はまるで眠っているかのようと師匠に言われたこともあり、剣先が読めないという強さがある。実際に琴平も磐音には勝つことができなかった。その磐音が今、琴平を抑えるため、友との最後の戦いのために刀を振るった。

 

たった数日前は江戸で豊後への帰還を喜び合っていたのに、今、慎之輔と琴平は世を去った。琴平の家は取りつぶしとなり、許嫁であった奈緒の姿もどこに行ったのかわからない。一人となった磐音は、もう豊後には居られぬと江戸へ向かう。

 

磐音が江戸へ向かった理由、そのすさまじさに読み手もどこか痛みを抱えたまま先を読み続ける。浪人として江戸に向かった磐音は、長屋でどうにか暮しを立てることとなった。大家の金兵衛は周囲からの信頼も厚く、そして人を見る目があった。磐音を住まわせ仕事を紹介する。家賃を取れなくなっては困るとは言いつつも、本当は磐音を思ってのことであろう。料理屋に磐音を紹介し、磐音はうなぎをさばく仕事を得た。思いのほか包丁さばきも上手く、料理屋からの評判も良かった磐音だが、もう一つの仕事として用心棒としても働くことになった。1巻目は雇われた両替屋での事件についての磐音の活躍が描かれている。

 

剣の腕も確かな上に人柄も良い磐音は長屋の皆にも頼りにされる存在となるが、慎之輔、琴平、舞を思うたびに心の棘がうずく。

 

想像していた通りの渋さ!50巻もあるかと思うとちょっと嬉しい。この冬は江戸に浸るぞ。