Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#647 世界観に呑み込まれました~「後宮の烏」

後宮の烏』白川紺子 著

なぜここで一人で生きなくてはならないのか。

 

本来「読んだぞ!」という満足感と余韻を楽しんでいる時点で記録を残したいのだが、どうしても仕事が忙しくプライベートを圧迫する事態に陥ると記録を残す作業が後回しとなってしまう。かろうじてまだ記憶に残っているうちに記しておきたい。

 

ここ数年楽しく読んでいるラノベシリーズがあり、その本を購入する度に必ずおススメに上がってきていた本書。この間のAmazonのイベントで随分とポイントがたまったのでまず試しに1冊目を購入してみた。

 


本書がおすすめとしてあがってきたのは、恐らく小説の舞台のせいだろう。ともに架空の国でどこか大陸を思わせるような雰囲気がある。さらに時代設定も近代ではなく鎌倉室町あたりを思わせるような設定となっている。そして登場人物が王宮に関わる人間で、それもかなりの高位の人物が登場していることも共通点と言えるだろう。

 

好みの問題かもしれないが、私はかなり江戸好き、時代小説好き、であるので、時代がかった小説は国が違っても「好き」の範疇に入る。そして昔からなんとなく大陸の文化が好きで、その文化を生み出した背景にリスペクトを感じている。そのせいか、本書もものすごくものすごく楽しく読めた。

 

この国は島国だそうだ。王宮が国を統率しており、その後宮には数多くの妃が暮らしている。今の王は若くしてその位に就いたが、父の正妻である皇太后の血筋ではなかった。故に力を蓄えたい皇太后にとっては、東宮が自分の血筋ではなく、位の低い出であった妃の子であることが邪魔でならず、周囲を陥れ、東宮の母を亡き者にし、東宮廃太子とした。ただの王子となった高峻は、それからたった一人で悲しみと痛みを背負う。

 

成人した高峻は王宮を我が物にしようと企む皇太后をとらえ、自らが王となる。現在後宮に暮らす妃たちはすべて高峻の妃だ。しかし、たった一人、高峻との夜伽をしない妃がいる。夜明宮に暮らし、誰に会うこともなく、金色の鳥とひっそりと暮らす妃、烏妃だ。烏妃は妻としてこの後宮に住んでいるのではなく、前王朝の頃から続く、「ここに住むもの」としての妃であった。

 

夜伽がないので、烏妃の代替わりは珍しい方法で行われる。それは、夜明宮で烏妃とともに暮らす鳥が、次代を探してくる。現烏妃の寿雪はまだ16の若さだ。幼いころにこの宮に連れてこられてからは、烏妃になるべく教育を受けた。烏妃は術を使う者であることから、なにか怪しいものと他の宮との行き来もない。ただ、魂の助けを求めるものがひっそりと夜明宮を訪れるのみだ。

 

そこへ、突然訪問者が現れた。それも王である高峻自らの訪問だった。烏妃の力を信じ、この世に魂を残してしまった幽鬼を救って欲しいとのことだった。手には翡翠の耳飾りが一つ。これを手掛かりに幽鬼が誰かを探せと言う。最初は断る寿雪だったが、悲しむ物を幽鬼を見捨てることは出来ず、高峻とともに過去を追う。

 

なんとも不思議な世界観に呑み込まれてしまった。これは是非続きも読んでいきたい。ラノベと聞くと、設定がわかりやすいファンタジーと思っていたが、レベルの高い作品が多いですね。