Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#512 江戸料理のあたたかさ~「まんぷく旅籠 朝日屋2」

まんぷく旅籠 朝日屋2』高田在子 著

朝日屋に人が集まり始める。

 

読みながら、「これは一体…」と疑問を持ちつつも一先ず最後まで読んだ本書。実はシリーズの2巻目で、1巻目を飛ばしてこちらからいきなり読み始めてしまうという大失敗。しかも、本書についての記録を残そうとした時に1巻目があることを知った。

 


気を取り直して、1巻を読み終えた後にまたさーっと作品に目を通して、謎だった部分を再確認する。

 

1巻目のタイトルにある「ぱりとろ」は、包み上げというもので春巻きのようなものだろうか。具にあんでとじたきのこ炒めなどが入っており、ぱりっとした皮の食感と中からとろけ出すきのこのあんかけのバランスが絶妙との評判で朝日屋は客入りが途絶えない店となった。この料理は秋の玉手箱という名前が付き、朝日屋を代表するメニューとなる。

 

さて2巻目、その玉手箱に盗作の疑いがかかる。朝日屋のある場所は、もともと板長である慎介が務めていた福籠屋の土地だった。福籠屋は味の良さで定評のある江戸を代表する店の一つだったが、潰してやろうという裏の力が動く。慎介は店を守ろうとするも、腕に怪我を負い、それが致命傷となり今は思う様に腕が動かなくなった。元火付盗賊改めで今は朝日屋の主である怜治は、これは福籠屋と絡みがあるのでは?と睨む。

 

1巻目を飛ばして読んでしまったので、この玉手箱の背景がよくわからず、ずっと疑問に思いつつだったのだが、やっと納得。やはりシリーズものは順番に読むべきですね。朝日屋で働く面々にも何かありそうだなあという予感はあれども、やはりそれぞれのキャラクターについては1巻のほうがもちろん説明が詳しい。

 

ところで主人公ちはるだが、1巻目では特に怜治に対して江戸っ子風な切符の良い口の利き方なのだが、2巻目は慎介との会話が多いからか幾分大人しくなっている。そして1巻目ではまだまだ見習い風だったが、2巻目では料理の腕も上がり周りから信頼を得ている感じもあった。

 

2巻目のタイトルの「なんきん」は、朝日屋の近くに住む職人の妻が急に家を出てしまい、二人の子供たちの食事の世話に朝日屋が手を貸すことになる、というストーリー。まだ幼い男の子は母親が恋しくてたまらない。とくに母親の作った手料理が食べたくて、父親がどうにか工面したものには全く手を付けなかった。とにかく一日中大声で泣いてばかりで、周りは皆、疲れてしまう。

 

そこで朝日屋の登場だ。子供の好きそうなおかずを考え、母親の作っていた料理に近いものを探し出し、泣いていた男の子もやっと食事をとるようになった。なんきんは南瓜、つまりかぼちゃのことだ。母親がお餅の上にかぼちゃで作った餡をかける。これをお日様のようだと呼んでいた。子供たちにとっては母親の優しさと温かさに溢れる思い出の一品だ。

 

このシリーズ、とにかく読みやすいし、料理の描写も大変に面白いので続けて読んでいきたいと思う。巻末にこんなコメントが。

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なるほど!プロの面々のお力添えがあってこその充実した料理描写だったのかと納得。これは3巻目も楽しみだ。