Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#628 甘酸っぱい時代を思い出しますね~「ぼくは勉強ができない」

『ぼくは勉強ができない』山田詠美 著

なつかしい一冊。

 

先週から海外からのお客様が増えている。そして周りでコロナ陽性判定の人も増えている。オフィスで動ける人にも限りが出ており、毎日フル回転でお客様のアテンドしております。読書をする分には移動中だったり、食事が出てくるのを待っている間だったり、寝る前だったりとすきま時間を上手く使っているのだが、記録を残す暇が無い!

 

ということで、早速書いていこう。本書はずっとずっと前、何かのキャンペーンの時にKindle版がものすごくお買い得だったので購入してあったものだ。

 

山田詠美さんと言えば、R&B音楽好き+読書好きならきっとこの本は読んでいるはず。

私も読みました。Eric BenetとかD'angeloとか聴きながら読みましたよね。そして山田ワールドに引き込まれ、いくつかの作品を読んだ記憶がある。そして本書は私が読んだ著者の作品の中で初めての日本舞台の作品だった。日本舞台というか、ブラザーシスターが全く登場しない作品といえば良いだろうか。

 

主人公は高校生の男の子、秀美だ。秀美には父親いない。出版社に勤める母親と、その父である祖父との3人暮らしだ。今でもそんな風潮があると思うが、片親というのは何かと子供の教育においてのマイナス点を攻撃する題材になりやすい。秀美も同じで、ちょっと変わったことをすると「あの子はお父さんがいないから」と言われてしまう。貧乏も「お父さんがいないから」と回りは言うが、何のことは無い。母がショッピング三昧しているから家計に余裕が生まれないだけのことだ。そして母は男にモテる。

 

秀美の祖父も母も、秀美が人と同じではなく個性を持ったモテる男になるようにと、しっかり英才教育で育てあげた。だから秀美もモテる。まだ高校生なのでかわいらしさが先に目に付くが、同世代からであれば大人っぽく見えることだろう。高校生くらいになるとそれも個性として認められるのだろうけれど、もっと幼い時分には「可愛げのない子」と悪目立ちしてしまい、秀美自身は大人の事情の矛盾を感じることとなる。しかし秀美には母と祖父の愛情さえあれば大丈夫なのだ。廻りの批判など心の傷にもなりはしなかった。

 

さて、高校生になった秀美には桃子さんという年上の彼女がいる。どんどんと大人の世界へと足を踏み入れる秀美のまっすぐな感性が楽しい。どんな大人になるのかなあとワクワクしてくる。桃子さんは母親ともどこか共通した枠にはめられない己を持つ女性だ。そう、秀美の周りには「自分は自分」という絶対に決められた枠に収まろうとしない強い個性に溢れる人たちが多い。その様子を読んでいると「ああ、そうか。」と今の自分の悩みも解決法があるような気持ちになる。

 

久々に懐かしい本を読んで少し元気をもらったかな。初めて読んだ学生時代のことも合わせて思い出したりと、なんとも懐かしい甘酸っぱさが蘇った。