Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#232 娘が大人になって母となり、母として今度は娘を育て・・・

 『愛すべき娘たち』よしながふみ 著

 母と娘との心のとげに触れる作品。

愛すべき娘たち (ジェッツコミックス)

愛すべき娘たち (ジェッツコミックス)

 

 

とてもとても評価の良かった作品だったので購入してみた。「泣ける!」というコメントなんかもあったりとよしなが作品は期待が高まる。

 

5編の短編が繋がっている。登場人物が微妙に交錯していて、すべて女性が主人公となっている。読み手が女性であれば確かに共感する部分もあるだろういう設定だった。

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Kindleで読んだのだけれど、1ページ目だけがカラー。この親子を軸に物語は進む。美人のお母さんは中年となり、娘は30で市役所に努めている。夫であり父は数年前に他界し、母娘二人の暮らしだ。

 

女性二人の生活というのは何かと気を使わずにズケズケと話してしまったりもするので、しっかりした絆がありつつも表面的な親子の仲はしっくりいかない時もある。この作品も同様で、母への娘の甘えが見え隠れし、読者へ母親の存在の大きさを思い出させる。

 

その母がある日唐突に再婚した。しかも自分と同世代で、いきなり同居がスタートする。20余りも年の離れた夫婦に娘はたくさんの葛藤を抱えるわけだけれど、そこは30をすぎた大人なので時期うまく折り合っていけている。

 

今や30歳で独身でもなんの問題もないけれど、この作品ではお見合いをしたりと「結婚」を迫る周りの圧迫感が描かれている。結婚とは、幸せとは、それぞれ子供の時からの環境次第で求めるものが変わるわけだけれど、「寂しさ」とどう向き合うかを教えてくれている一冊だと思う。

 

この母親はとても美しいのだけれど、なぜか本人は自分は全く美しくなく、出っ歯でむしろ普通以下の外見だと信じている。その理由が最後の作品であきらかになるのだけれど、その部分は確かにかなり切なかった。最後の作品には祖母も登場。

 

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今までよしながふみさんの作品に「BL」という先入観があり、『大奥』やこの作品のようにむしろBLが欠片も出てこない作品を読んでストーリーの深さに感銘を受けた。『大奥』は歴史をファンタジーにするにあたり、大胆にも男女を入れ替えるという想像力に脱帽し、この作品では女性の心の機微を見事に表している。

 

『大奥』の次は一体なんだろう!楽しみすぎる。