Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#614 ポアロのおじいちゃん化~「鳩のなかの猫」

『鳩のなかの猫』アガサ・クリスティ

ポアロシリーズ第33弾。

 

なんだか朝晩寒いなーと思っていたら、17時台でもうすっかり暗くなっている。秋もそろそろ折り返し地点を過ぎたということだろうか。暗くなる時間にすら気を配ることもなく、周りの風景に至っては一切気にせず過ごしていた。

 

昨日、外勤でとある電車に乗った時、車窓からくっきりと富士山が見えた。残念ながら私の家のあたりからは建物が遮るせいで富士山の姿を拝める場所が皆無だ。昨日見えた富士山は山頂がすでに白く、すっかり冬景色になっていた。どんどんと冬が近づいてるなあ。

 

さて、去年からの宿題をまたゆっくりと再開したが、ポアロ作品も残すところあと少しなのかなーという気がしている。電車の中で読み始め、到着地が近づいてもなかなかポアロが登場しない。しかも帰りの電車でもぜんぜん登場する気配が無い。30作目を過ぎたあたりからどんどんポアロの活躍が控えめになってきているが、やっぱりおじいちゃん設定になってるので体力的にもう捜査なんて無理なのかな?と変な推測をしてみたり。まずは詳細を記録。

 

Title: Cat Among the Pigeons

Publication date: Nov 1959

Translator: 橋本福夫

 

さて、今回は初の翻訳者だったので少し調べてみた。Wikipediaによるとアメリ黒人文学の翻訳で知られた方とある。

 

先にも書いたが、今回の作品はポアロがなかなか出てこない。Kindleで読んでいるのでページ数などで記録できないのだが、全体の30%あたりでやっと事件が勃発し、ポアロが登場するのは70%を過ぎてからだ。ポアロがいなくても警部たちがあれこれ調査をしつつ背景が見えては来るのだが、全くもって解決には至らない。

 

今回の舞台は2つある。まず、物語はラマット王国という中東の架空の国からスタートする。王国でクーデターが勃発し、王位が危うくなることを懸念した国王とその友人で飛行士の英国人は、王家が蓄財方法の一つとする宝石類を持ち、国外脱出を計画した。万が一の場合に備え、その宝石を託された友人ボブは、王とともに飛行機で国外へと飛び出すも残念ながらその機体は山中で行方不明となる。

 

王家が財宝を持っていることは周知のことだったようで、すぐに追手が迫ることが予想された。そこでボブはちょうどラマットに滞在していた姉と姪にこっそりとそれを託す。しかし問題は姉と姪は託されたということを知らずに英国に帰国したことだろう。なぜならモノは二人の知らぬ間に、荷物の中に決して見つからない形で隠されたからだ。

 

ここから第2の舞台である英国へと話は動く。イギリスはパブリックスクールという良家の子女を教育する施設があるが、ロンドンでメドウバンクという女学校もそれにあたる。校長のバルストロードは優れた人物で、学校の運営に人生を賭けていた。安全で、英国でも一二を争う女学校として知られたメドウバンクで、あろうことか殺人事件が起こった。これがラマット王国へとつながっていくという話。

 

登場人物は女学校の生徒や先生が中心で、ちょっと穏やかな流れに感じられる部分が強い。学校が舞台となるミステリーはたくさんあるが、本作は若さ故の無鉄砲さや、人と人の複雑な人間関係が根底にあるわけでもない。「これはびっくり!」なサプライズも控えめだった。

 

タイトルのcat among the pigeonsだが、たいていは前にputとかsetとかthrowなどを置いて使うが、イメージとしては鳩がわらわら集まってのんびり日向ぼっこしているところへ、突然猫を放り投げて大騒ぎ!な状況を起こしちゃう様子を指すので、平和なところへ何等かの行動や言葉で現場を混乱させる人、いますよね?そんな状況のことだ。

 

たまたまこの表現を知っていたので、相当な困ったちゃんが何かをしでかしてしまって大事件が勃発するのかな?と想像していた。読み終えた今、いったい猫を仕掛けたのはだれ?な気分で紋々としている。あと数冊、ポアロが活躍してくれることを期待。

 

評価:☆☆

おもしろさ:☆☆

読みやすさ:☆☆☆