Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#607 宿題は早めに終わらせなくちゃね~「死者のあやまち」

『死者のあやまち』アガサ・クリスティー 著

ポアロシリーズ第32弾。

 

雨のおかげで読書が進む今日この頃。夜、一人ゆったりホットドリンクと共に読書する時間が何よりも幸せに感じる。読書の秋ですね。

 

しかし本から目を移すと、そこにはまだまだモノが溢れに溢れている。未読の山を本棚に押し込み、ワードローブを半分くらいにしてからというもの、快適環境作りはすっかり停滞中だ。今年も恐らく年末年始の帰省は無理そうなので、それまでにはどうにか快適さを手に入れたい。そして今年は可能な限り暖房器具に頼らない日々を過ごしたいと計画している。我が家の暖房はエアコン一つで、ストーブもこたつも無い。家にいる時間もそう長くはないので、薄着をせずしっかり着こむことで寒さ対策を取ることにした。

 

数年前の冬、カーテンレールの一番窓側に透明のビニールカーテンを取り付けた。これが窓からの外気を遮断してくれるので、部屋の温度が数度上がるほどの効果がある。保温性の高い寝具や部屋着も準備したので、今年は少し頑張ってみよう。ちなみに、去年は11月の頭ですでに暖房使ってました。

 

さて、夜、雨音を聞きながら何を読むべきか。去年の夏に自分に課した「アガサの小説を全部読む」という宿題はやっと1/3に届きそうというところだ。これも早々に読んでしまわなくてはならないのだが、なかなか読み進めることができずにいる。雨音を聞きつつ、とりあえず10月はできるだけアガサを読もうと決めた。

 

本書は32弾目となる。

Title: Dead Man's Folly

Publication date: Oct 1956

Translator: 田村隆一

 

本書のヒントはFollyだ!と読む前から気になった。辞書で調べてみると「愚かさ」などの訳が出てくるが、そこに「あやまち」という意は見当たらない。そこでYahoo! UKでFollyの画像検索をしてみたところ、これが出て来た。

Folly、本書では「阿房宮」と訳されている。ますますFollyの謎が深まるのだが、そもそも阿房宮とは秦の始皇帝が現在の阿房宮村に建設した宮殿のことを指すらしい。字面からなんとなく中華風な建物を想像して読んでいたのだが、上の画像を見るとむしろ形が統一されておらず謎が深まる。ひとまず読書中は中国にある8角形の東屋みたいなものを想像していたが、石造りのしっかりどっしりした建物に頭の中の図を置き換えて読み続ける。

 

さて、今回ポアロは何度か登場している探偵小説作家のオリヴァ夫人からのわけのわからないお誘い電話に、デヴォンにあるナスハウスに引き出されてしまう。オリヴァ夫人はこの度お祭りで催される出し物の一つとして、小さな作品を書いた。これに従って実際にその場面を演じ、真犯人を当ててみようという斬新な企画である。

 

オリヴァ夫人は地元の参加者と共に、会場となるスタッブス卿の家に滞在しながら催し物の準備をするも、なんとなく心に引っかかることがあったようだ。そこで頼りになる友人のポアロを呼び出し、自分が不安に思う何かを探して欲しいと頼んだ。

 

スタッブス卿には年の離れた妻がいた。その妻は大変美しいのだが、着飾る事以外に興味はなく、周囲の評は「頭が弱い」だった。この表現、今なら何と訳すのだろう。本書では他に「子供のような知能」などと表現されていた。

 

現在スタッブス卿が住むナスハウスは元はフォリアット家が有するものだった。フォリアット家は今では夫人一人を残すのみで、その夫人は現在ナスハウスの敷地内にある小屋に住んでいる。夫人は家族を次々と亡くし、相続税が払えなくなったことから、裕福なスタッブス卿に邸宅を売却、そして自分は小屋へと移り住んだ。

 

フォリアット家がナスハウスを譲り渡す前、フォリアット夫人は社交界でのマナーを身に着けさせるため、一人の娘を預かっていた。裕福な家に生まれたが、二親を亡くした娘、それが現在のスタッブス卿の妻であるハティだ。ハティはフォリアット夫人のもとで教育を受け、そしてスタッブス卿へと嫁ぐこととなった。

 

ポアロは祭りの前日にナスハウスへ到着し、そしていろいろな人物に紹介された。しっかりものの家政婦、町の人々、そしてフォリアット家に隣接するユースホステルに出入りする外国人や、その他大勢の客に出会う。そして、ポアロが行くところにはやはり事件が起こり、謎解きが始まる。

 

30弾目を過ぎたあたりから、ポアロが完全におじいさん風に書かれているところが気になる。ポアロの行動自体も狭まり、登場頻度も減っている。簡単に言えば、ポアロの動きが少なく、活発な推理活動が出来なくなっている。以前のように現場周辺を足繁く調査したり、頻繁に遠方へ移動することも無くなった。ロンドンに居ても近くを1往復するくらいで、確実にポアロ以外に事件を追求する第3の目の役割を成す人物が登場するようになった。

 

ポアロの謎解き部が以前ほど熱意を感じられないせいか、タイトルにもあるFollyがまたもや気になって来る。以前はポアロの謎解きに自分の意見など入り込む余地もなかったが、本作は時に「ご自分でお考えなさい」と言われているような気持ちになる。早速Yahoo!UKでFollyを調べるとこうあった。

意味が二つかかっているんだなー。一つは愚行、そしてもう一つは建築物。フォリーとは全く実用的な意味を持たない公園などにあるようなものを指すらしい。雨風もしのげないし、何かを記念するわけでもないが「とりあえずここに建ててみた」みたいなものだろうか。

 

意味を二つかけるほど複雑な話ではないが、なんとなく途中から先が想像できそうな流れだった。決して犯人が分かったぞ!というのではなく、「これは大どんでん返しが起こるような作品ではなさそうだ」という直感が働く。

 

とはいえ、大変読みやすい作品で教科書に出てくるショートショートのような印象。

 

評価:☆☆

おもしろさ:☆☆☆

読みやすさ:☆☆☆